コラム

宇宙と心理学の関係

2023.11.9 心理
  • パーソナリティ心理学
  • 知覚心理学

宇宙と心理学にはどのような関係があるのでしょうか。 

 

日本には365日の全てに何らかの「記念日」が制定されています。
12月2日は「日本人宇宙飛行の日」に制定されています。
1990年の12月2日に当時のTBSの秋山豊寛記者が旧ソ連のソユーズTM-11号というロケットに搭乗し、日本人初の宇宙飛行に成功しました。 

 

秋山記者は前年の1989年10月から1990年11月まで、モスクワ郊外の「星の街」とよばれる宇宙飛行士訓練センターで訓練を受け、ロケットの打ち上げ前日の12月1日にソ連の国家審査委員会から宇宙飛行士の承認を受けています。

秋山記者が日本人初の宇宙飛行士になった経緯として、1989年時点では毛利衛氏がアメリカのNASAのスペースシャトルでの宇宙飛行することが日本人初になるはずでした。
しかし
、1986年にアメリカのスペースシャトルであるチャレンジャー号の爆発事故の影響で毛利氏の飛行計画が遅れたため、秋山記者が日本人初となったのです。
秋山記者は民間人では初めて商業宇宙飛行を利用することになり、また、ジャーナリストでは初めて宇宙空間から宇宙について報道することにもなりました。

その後、秋山記者は初めて宇宙に行った日本人として宇宙探検家協会(ASE:宇宙飛行を経験した宇宙飛行士の国際団体)の会員にもなっています。
また、旧ソ連の宇宙ステーション「ミール」に滞在した唯一の日本人でもあります。
このような偉業を記念して、12月2日は「日本人宇宙飛行の日」に制定されています。
 

 

 では、そんな宇宙と心理学にはどのような関係があるのでしょうか。
まず、心理学には航空心理学という分野があります。
これは、地平を離れた空間における人間の意識や行動を研究する学問領域です。

航空心理学の研究領域は各種の航空機に関する人間工学的な研究として、操縦性の研究・判断のしやすい情報表示のための操縦席周辺機器についての研究(計器類の表示や配列、警告音、スロットルやレバーの感触など)や、人間の動作特性にあった制御方式とその援護システムなどの人間と機械系関連の研究、操縦士の職務適性や知能・パーソナリティなどに関する心理検査の研究・開発、低圧および特殊環境におけるストレスの研究などです。

そして、最近では航空機の技術的な進化・発展やあらゆる計器の自動化に伴い、計器類のディスプレイの読み取りなどに関する視知覚的役割の重要性が取り上げられるようになっています。
また、高速飛行に伴う視環境における動態視覚や離着陸時の奥行き知覚に関する操縦士の姿勢・眼位・周辺視などの研究も重要視されるようになっています。このように、まず「空を飛ぶ」という宇宙へ向かう前段階においても、パーソナリティ心理学・生理心理学・知覚心理学・認知心理学などの様々な分野の心理学が応用されているのです。
 

 

航空心理学が「空の上・地球の内側」での人間の活動に関する心理学的研究であったのに対し、宇宙航空心理学という分野もあり、研究が進められています。

宇宙航空心理学とは、 宇宙空間における人間の行動を閉鎖された環境下における行動特性として考える心理学の分野です。

研究内容としては、微小重力環境下での視知覚や作業時の眼と手の協応動作や眼と身体各部などとの協応運動は地球上の重力(1G)の場合との違いなどがあります。
例えば、微小重力の下で視覚的安定性がどの程度維持されるか(崩壊するのか、もしくは順応するのか)については、その耐性と可塑性を検討するため眼球運動と筋活動を測定・評価するという方法があります。
また、微小重力下では地上では見られない錯覚が観察されることも判明しています。たとえば、軌道飛行中の機内で逆立ちして天井を歩くと、自分は正常位でパイロットが逆立ちして操縦しているという錯視が生じることがあります。
また、同様の条件で複数の搭乗員の逆立ちを見ると突然、逆立ちから正立の印象に変わる錯視が生じることも判明しています。
これは客観的な座標よりも自己中心的座標の優位性を示すものとして知覚心理学の観点からも注目されています。このように、宇宙航空心理学では、特に知覚心理学の観点から様々な研究が進められているのです。 

 

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