心理学・カウンセリング・メンタルケアの専門家には、3月生まれの著名な先生方がいます。
三隅二不二(みすみ じゅうじ)は1924年3月21日生まれの日本の社会心理学者です。
三隅は社会心理学の概念であるグループ・ダイナミックス(集団力学)を日本に紹介し、日本グループ・ダイナミックス学会の設立に尽力、長く会長を務めたことでも知られています。
また、三隅は集団内におけるリーダーシップに関する理論であるPM理論を提唱したことでも世界的に有名です。
PM理論とは、集団におけるリーダーシップを、目標の達成(課題解決)と集団の維持という2つの側面から検討するというものです。
PM理論の【P】とは目標の達成(課題解決)に関する“パフォーマンス(Performance)”のことであり、【M】は集団の維持機能である“メンテナンス(Maintenance)”のことを指します。
優れたリーダーとは、目標の達成に向けて高いパフォーマンスを示しつつ、集団を維持し続けることができるということになります。
しかし、全てのリーダーが【P】も【M】も最高の状態で示すことができるわけではありません。
そこで三隅は集団におけるリーダー像を以下の4つに分類しました。
PM理論に関する研究は、企業組織、官公庁、学校などの様々な集団を対象に実施されています。
また、三隅の研究グループは、PM理論に基づくリーダーシップが実際にどのような影響を与えるのかを検討するために、心拍数や血圧、皮膚電位反応などの生理指標を用いた実験も実施しています。
20世紀を代表する心理学者の1人であるスキナーも、3月生まれです。
スキナーは1904年3月23日生まれのアメリカの心理学者で、学習心理学、特に行動分析学とよばれる分野を創始した人物です。
スキナーはハーヴァード大学で心理学を専攻し、1930年代にハトやラットなどを使った実験でオペラント行動の基礎的なメカニズムを解明しました。
その後、オペラント行動のメカニズムを人間に応用し、言語・教育・文化・薬理・心理臨床などの様々な分野へと拡大していき、応用行動分析という分野が確立しました。
特に心理臨床、いわゆる心理カウンセリングにおいて、応用行動分析は行動療法として治療・支援に大きな成果を上げています。
スキナーはこれらの功績により、国際行動分析学会の会長を務めたり、アメリカ科学アカデミーのメンバーに選出されたりしています。
また、アメリカ心理学会から功労賞と特別功労賞をダブルで授与されています。
スキナーは著作や論文が非常にたくさんありますが、実は小説も執筆しています。
スキナーは、行動分析学の手法を集団や社会制度の中に取り入れることでユートピア(理想郷)を作ろうとする試みを物語として形作りました。
この物語は「ウォールデン2」というタイトルでアメリカで出版され、日本でも「心理学的ユートピア」というタイトルで訳書が出版されています。
「ウォールデン2」は小説の中に登場するユートピア(理想郷)の名前であり、架空の共同体として描かれていますが、本の出版後、実際に小説のないように基づいて共同生活を実施するという試みが複数実施されています。
スキナーは人間の行動に関する心理学的研究成果を用いることで、科学的で合理的な生活を送ることができる社会を確立させることができると考えていました。
スキナー個人はその考えを論文等の学術的なものだけではなく、小説としても執筆し、実社会にも大きな影響を与えています。
心理学の知見を応用して社会を良くしていこうという考え方は、実社会で心理カウンセリングを実施し、個々のクライエントの治療・支援に携わる心理カウンセラーの活動とも合致するものです。
影響力の広さと強さから、スキナーの功績は非常に偉大なものであり、20世紀を代表する心理学者であるということがよく分かるのではないでしょうか。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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