孤独感は感情の中でも、ポピュラーなものであると同時に、メンタル面の様々な問題の原因となることもあります。
現在、新型コロナウィルスの感染拡大により、自粛生活が多くの地域で続いています。
そのため、人と人とが直接顔を合わせる機会が減少しており、必然的にコミュニケーションにも制限が発生しています。
新型コロナウィルス自体は身体疾患ではあるものの、その影響が様々な場面に波及しており、メンタルヘルスにも影響が出ています。
特に対人関係やコミュニケーションに影響が出ており、その過程で孤独感を感じている人も多いと考えられています。
では、孤独感とは学術的には、どのようなものなのでしょうか。
孤独(孤独感)とは、日本語における「孤独鰥寡(こどくかんか)」という語の短縮形として生まれた言葉です。
この4字の全てが1人であることを表しています。
孤独(孤独感)とは、1人であることであり、1人であるというあり方を表す語です。
人間はそれぞれかけがえのない個として存在しているわけですが、それ自体がそのまま孤独であるということをも意味しています。
孤独感とは、心理学的には、誰とも精神的につながりがない状態、他者に自分の気持を理解してもらえないという状況で感じられるものです。
孤独感がどれ程度、あるのかを数値化して把握する方法もあります。
心理学者のペプローとパールマンは孤独感に関する多数の定義を概観し、それらの共通点として、
① 個人の社会的関係の欠如に起因している
② 主観的な体験である
③ その体験は不快で苦痛を伴う
という3点を指摘しています。
これらの定義をまとめて質問紙として開発されたのが、孤独感尺度です。
孤独感尺度には、一次元尺度と多次元尺度の2種類がありますが、代表的で最も広く利用されているのは、心理学者のラッセルらが開発した一次元の改訂版UCLA孤独感尺度です。
この尺度は「私には頼りになる人がいない」「周囲の人は、私とはなじまないように感じる」などの20項目で構成されており、5段階評定で回答するものです。
本尺度のアルファ係数は0.94と非常に高く、内的整合性が高いことが証明されています。
日本では、落合良行先生によって記述的・探索的研究からスタートし、因子分析も用いて「人間同士の理解・共感の可能性についての感じ(考え)方」と「自己(人間)の個別性の自覚」の2次元16項目(5段階評定)からなる孤独感尺度LSO(ルソー)が開発されています。
孤独という概念は集団や社会という概念と、切っても切れない関係性であるため、社会心理学でも研究されています。
社会心理学者のリースマンは「孤独な群集」という書籍を執筆・出版しています。
リースマンは精神分析家のフロムから強く影響を受け、現代人は良心による自律的な人との関わりが希薄になっていると指摘しました。
つまり、集団や社会として不特定多数の人間が集まっている状態にも関わらず、結局、人間は孤独なのであるということです。
また、リースマンは人間の社会的性格類型について、固定した集団の一員として同調性の強い「伝統志向型」から、封建制が崩れ変化の激しい過渡期的タイプの「内部志向型」を経て、現代のアメリカ中産階級は政治をよく知りながら、それを拒否し受け入れようとしない政治的無関心な「他者志向型」が支配的であると述べています。
●伝統志向型:停滞的な共同体社会の中で宗教や習慣などの伝統に従って行動するタイプ。
外的権威や恥の意識によって行動を規定されており情緒的で非合理的な特徴を持つとされています。
●内部志向型:伝統や習慣が自明性を失っていく変化の激しい社会で、自己内部の良心(人生の初期段階で親や教師などに植えつけられた抽象的な目標)に従って行動するタイプ。
●他者志向型:絶えず他者の行為や欲求に同調しながら自己の生活目標を変えていくタイプ。
1940~50年代のアメリカ大都市における上流中産階級に典型的であったとされています。
これら3つの類型は人口動態のS字曲線と関係づけられており、多産多死の中世以前の社会では伝統志向型、多産少死の近代社会では内部志向、少産少死の大衆社会では他者志向が支配的になると考えられています。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
「つぶやきコラム」は、医療・福祉・心理学・メンタルケアの通信教育スクール「TERADA医療福祉カレッジ」が運営するメディアです。
医療・福祉・心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、調べたいことがある、学んでみたい人のために、学びを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。