ポジティブになることが良いことであると考えられがちですが、ネガティブな状態にも精神的な健康において役立つ要素があります。
基本的には、心の状態はポジティブな状態が良いものであり、ネガティブな状態は改善すべき状態であると考えられています。
精神疾患の治療・支援やストレスの改善などにおいても、精神状態をポジティブにすることが重視されています。
しかし、ネガティブな状態にある人をポジティブな精神状態に移行させることは簡単ではありません。
また、現実にネガティブな出来事に見舞われたり、対人関係で実際にトラブルを抱えている人に、気持ちの面だけポジティブになるべきだと言っても、それは現実から目を背けているだけで、根本的な解決にはならないことも多いです。
さらには、元々、ネガティブに なりやすい悲観主義の人も存在しています。
この場合、様々な出来事・事象をネガティブに捉えやすいという傾向があるため、ポジティブな状態に転じるのは非常に難しいという問題があります。
そこで、あえてネガティブなままの状態でい続けるというアプローチが科学的に研究されています。
物事をネガティブに捉えがちな傾向を悲観主義とよびますが、これは抑うつ状態に伴うことが多く、自分自身・世界・将来についての悲観的な考えが支配的な状態です。
そして、悲観主義の中でも防衛的悲観主義とよばれる、ある種の性格傾向を持った人たちがいます。
防衛的悲観主義とは、過去の同じような状況において、良い結果であったにもかかわらず、これから実施する課題に対する期待感が低いという傾向のことを指します。
つまり、成功体験が次の同様の課題に反映されず、これから実施することで起こるだろう未来の結果に対して、やる前から悲観的になってしまうという状態です。
では、自分が防衛的悲観主義的な考え方をもっているのかどうかを確認するには、どうすればよいのでしょうか?
研究の結果、日本版の防衛主義悲観尺度というアンケートが作成されています。
本コラムでは、実際に回答・採点・結果の判定をすることはできませんが、尺度の内容につい記載したいと思います。
アンケートは試験(テスト)を受験することをイメージした内容になっています。
これらの質問項目に回答し、点数を計算した結果、満点の状態から考えて50%以上(半分以上)であった場合、その人は防衛的悲観主義の傾向を持つと考えられています。
その上で、防衛的悲観主義の人は、あえてネガティブになり期待を持たない方が、不安が少なく、コントロール感が高い状態で課題に臨むことができるということが研究の結果として判明しています。
つまり、悲観的な考え方の「クセ」を持つ人は、その「クセ」をそのままにして対応した方が、物事が上手く進められるということなのです。
このように、ネガティブな状態というものも、100%完全に悪いものではなく、上手く活用することができるケースもあるのです。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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