親子関係については、主に発達心理学や家族心理学において研究が実施されています。
人間と動物の大きな違いの1つとして、親子関係や養育が挙げられます。
人間は他の動物に比べて、成人(大人)になるまで長い期間が必要となるため、子どもを養育するために「家族」というシステムが発生・発達していきました。
家族は幼い子どもを単純にただ育てるだけではなく、その所属する社会の持つ文化や規範など、社会の構成員として必要とされる知識や技能の基礎を、しつけや教育という具体的な働きかけを通して子どもの中に形成していく役割を担っています。
これは、人間が社会的な動物であることが関係しています。
社会的であるということは、その社会について知る必要があります。
社会にはルール(法律)があり、国ごとの文化があります。
それらを大人になっていく過程でしっかりと身に着ける必要があり、そのきっかけは家庭・家族によって醸成されるものなのです。
また、乳幼児期における親や養育者の対応が、その後の人間のパーソナリティ形成に大きな影響を与えることが知られています。
最初にこの養育とパーソナリティ形成の関係について言及したのは精神分析の創始者であるジグムント・フロイトです。
その後も、様々な心理学者・精神医学者が養育とパーソナリティ形成について論じ、親子関係と子どもの発達への影響過程が研究されてきました。
その中で重要な知見の1つとして、子ども自身が持つ能力として、子どもの方から積極的に親子関係を形成していく愛着行動に注目が集まりました。
愛着行動は動物行動学者のローレンツの刻印づけの研究や、発達心理学のハーローのアカゲザルの子を使った代理母親の模型による実験などがあります。
また、報酬無しで愛着行動が生じることを示した比較行動学(エソロジー)的な観点から、発達心理学者のボウルビィが愛着行動を定式化しています。
ボウルビィは乳児が母親への能動的な接近・接触を通して愛着の絆を形成していこうとする能力をアタッチメントとよび、そのメカニズムを明らかにしました。
アタッチメントそのものは生涯にわたって変化していくものと考えられていますが、特に乳児期のアタッチメントのあり方が、幼児期から青年期にかけての発達に大きな影響を及ぼすことが指摘されています。
愛着行動もそうですが、子どもが親に対して能動的に働きかけるという観点が親子関係においては重要なものとなります。
このような子どもの能動性を評価することで、双方向からの親と子の相互作用のあり方を検討することができるわけです。
その過程で、子どもの知的発達や社会的・情動的発達に大きな影響力を持つことが明らかにされてきました。
その中には、子どもの発達を文化(社会的な意味の体系)の獲得と捉える言語学者のヴィゴツキーの理論の観点から、発達初期の親子関係にみられる対話(言語)を媒介とする、親子間での社会文化的な意味の形成、共有活動システムに注目が集まりました。
さらに、親子関係からはじまり、家族・近隣地域社会・学校集団・職場集団に至るまでの人間関係の中に認められる対話様式と対話参加者の認識形成の関係を明らかにすることにより、生涯にわたる文化に依存した相対的な発達の様相を浮き彫りにするという壮大な研究が進められています。
親子関係について測定・評価するための心理検査も開発されています。
これは、親子関係診断テストとよばれるもので、古くは、支配と服従、拒否と保護という二次元で親子関係を理解しようとした心理学者のサイモンズによる養育態度の理論に基づくものがあります。
これは、日常生活における親子関係、あるいは親の養育態度は子どもの心身の状態に直接的・間接的に影響を及ぼしているというものです。
親子関係あるいは親の養育態度を診断し、子どもの問題の改善・解決に向けたアセスメント資料とするために、質問紙形式を用いた標準検査が親子関係診断テストなのです。
日本では、心理学者の品川不二郎先生らが1958年に開発した診断的親子関係検査(子ども用と両親用がある)が、よく現場で使用されています。
親子関係については、主に発達心理学で研究されています。
発達心理学については、こころ検定3級の第1章で概観していますので、興味・関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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