怒りは人間の基本感情ですが、では学術的にはどのようなものなのでしょうか。
心理学において、怒りは人間の基本的感情の1つであり、怒りの表情は人種や文化を越えて類似しており、眉が引き寄せられて下がり、口が四角く開かれるというものということで共通しています。
怒りは欲求充足が阻止された時に、その阻害要因に対して生じるとされており、怒りに対応する基本的行動には「攻撃」や「破壊」があります。
また、怒りの状態では交感神経系が活性化し、血圧の上昇、心拍数の増加などが起きることが分かっています。
一般的に「怒られる側」がストレスを感じるというイメージがあるかと思いますが、実は「怒っている側」にも身体の内側で生理学的なレベルでダメージが発生しているのです。
従って、イライラしていることが多い人はメンタル的にはストレスが高く、怒りをぶちまけることでストレスが発散できているように見えても、実はフィジカル面にもダメージを受けてしまっているのです。
怒りの感情は日常的に誰でも感じるものであり、仕事でイライラすることは、誰にでも経験があることではないでしょうか。
一方で、怒りがコントロールできないことが大きな問題になると、重篤気分調節症や反社会性パーソナリティ障害、境界性パーソナリティ障害などの精神疾患へと発展してしまうケースもあります。
そこで、日常的なイライラにも、精神疾患の治療・支援にも、どちらにも有効な方法として活用されているのが、アンガーマネジメントです。
アンガーマネジメントとは、怒りの感情や攻撃行動を上手にコントロールするための技法です。
重要なのは「怒りを感じるのは悪いこと」や「怒りを感じないようにする」という考え方ではなく、怒りは自然なものであり、怒りを表すことは悪いことではなく、ただ、その強度や頻度、放出の仕方を工夫すれば良いというものです。
より具体的には、以下のように怒りを捉え直すのが、アンガーマネジメントの基本です。
アンガーマネジメントは心理学的な観点からの「怒りに関する教育」からスタートします。
まずは、正しい知識を身に着け、怒りの正体を知った上で「怒りは特別なモノでも、悪いモノでもない」という認識を持つことが重要なのです。
対人関係においても「怒りを我慢している人」や「どんな状況でも、全然怒らない人」が良い人なわけではない、という風に考えるのがアンガーマネジメントの基本です。
最近、様々な場面でアンガーマネジメントという言葉自体が非常に有名になってきていますが、アンガーマネジメントはただ単に怒りを我慢するということではないので、上手に利用しなければなりません。
多くの人は怒りの感情を社会的に不適切と考えてしまうため、ただただ我慢をしてしまい、怒りの発露を絶ってしまうだけのことが多いです。
また、ストレスを感じているにもかかわらず「感じていない・自分は大丈夫」と思い込んでしまうケースもあります。
これは、感情認知困難とよばれる状態で、企業等の経営者や管理職に多いとされています。
このような立場の人たちは、ストレスを感じても分かりやすくイライラしていることを周囲に見せるわけにはいかないため、別の形でストレスを発露させてしまいます。
たとえば、無茶食いや過度の飲酒・喫煙・ギャンブルなどです。
怒りを発露させないことが良いことのように見えて、どこか別の側面に悪影響が出てしまうこともあるのです。
怒りなどの感情に関する研究分野である感情心理学については、こころ検定4級の第6章で概観していますので、興味・関心のある方は是非、勉強してみていただければと思います。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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