ブリーフセラピーとは、ブリーフサイコセラピー、短期療法、短期精神療法などの呼称がある心理療法です。
呼び名は少しずつ異なりますが、最も強調すべきは「短い・短期」という点です(本稿では、ブリーフセラピーで統一表記としています)。
ブリーフセラピーは、簡便かつ短時間・短期間の治療・支援を目的とし、心理カウンセリングの費用対効果を考慮した心理療法であり、何よりも、短期的・効率的・効果的・経済的・魅力的をモットーとしています。
「短い」というのが、どれくらいの短さなのかというと、一般的には10~20回のセッションで治療・支援を修了させることを目標としています。
ブリーフセラピーが開発・発展した背景には、心理カウンセリングにおけるクライエントの経済的負担の問題があります。
主にアメリカにおいて、医療費の負担増や経済的困窮者の医療離れが深刻な社会問題となってしまったことで、効果的であることは大前提としつつも、短時間で効果が挙げられることが重視されるようになったのです。
とにかく「短く」ということを主体としているため、ブリーフセラピーには様々な種類がありますが、基本的なアプローチ手法は、傾聴・受容・共感・支持に基づく陽性転移を柱とする支持的な療法です。
また、可能な限り過去や無意識・退行などを避けながら、現実に沿った形で治療を進め、状況に応じて教育や助言・指導などの技法を用いるという点では共通しています。
日本の研究者・専門家も自身の理論に基づいた「ブリーフセラピー」を提唱しており、1974年に笠原嘉は小精神療法を提唱しています。
この療法は、いわゆる神経症(心因性精神障害)やうつ病のクライエントとその家族が各症状について理解できるように援助しつつ、深層心理への介入はできるだけ避けながら中立的・現実的な介入をしていくというものです。
また、1995年に大野裕が提唱したのは、コミュニケーション(Communication)、コントロール(Control)、認知(Cognition)の3つの「C」に焦点づけて、面接(セッション)を進める短時間精神療法を提唱しています。
ブリーフセラピーの代表的な手法として、解決志向アプローチというものがあります。
人間は誰しも問題を抱えながら生活を送っているが、少なくとも何らかの解決を生活の中で既に開始しているものの、そのことを正確に理解・把握できていないことが多いものです。
そこで、心理カウンセラーがサポートすることによって、クライエント自身が主体的に解決に取り組んでいるということを自覚させるというものです。
来談者中心療法が傾聴を重視した「聴く」技法であるとすると、解決志向アプローチ(ブリーフセラピー)は積極的に心理カウンセラーがクライエントに対して質問をしていくものであり「尋ねる」技法であるといえるでしょう。
解決志向アプローチには、以下のような3つの大前提があります。
1.もし、うまく行っているのならば、修正しようとするな。
2.もし、一度でもうまく行った経験があれば、またそれを実行せよ。
3.もし、うまく行かなくなったのなら、別の方法を試せ。
「うまくいっている」ということは、問題の解決に向けて、クライエント側が既にスタートを切っているということです。
しかし、うまくいっているという感覚や「これは問題を解決するための行動なのだ」という認識がクライエント側にない場合もあります。
そこで、上手に質問をしていくことで、クライエント自身に「今、対処していて、うまくいっているんだ」という認識を促していきます。
また、過去にうまくいった経験について質問し、まずはその方法を繰り返してみることで現在の問題を改善・解決していくというのも重要な手法です。
さらに、色々と試してみて、それでもうまく行かないのであれば、すぐに別の手法へと切り替えるということも大切なことです。
これらは、非常に当たり前のことのように感じるかもしれませんが、ストレスを抱えていたり、精神疾患のクライエントはその「当たり前」が分からなくなっているので、まずは自分自身で解決に向かっているという感覚への気づきを促していくわけです。
ブリーフセラピーは心理療法において確固たる地位を築いており、日本においては、日本ブリーフサイコセラピー学会が設立され、盛んに研究が実施されています。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部 「つぶやきコラム」は、医療・福祉・心理学・メンタルケアの通信教育スクール「TERADA医療福祉カレッジ」が運営するメディアです。 医療・福祉・心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、調べたいことがある、学んでみたい人のために、学びを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。