コラム

自殺と心理学の関係(3)

2022.9.15 心理
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心理学・精神医学では、自殺に関する研究でどのようなことが分かっているのでしょうか。 

 

 

自殺には様々な形態があるとされていますが、自殺学の研究において、その共通項をアメリカの臨床心理学者であるシュナイドマンは以下のようにまとめています。 

 

  1. 自殺の共通の動機は、耐え難いレベルの強い心の痛みである 
  2. 自殺を企図している人に共通する悩みは、自身の願望が叶わないという状況であ
  3. 自殺の共通する目的は、直面する難問を解決することである
  4. 自殺の共通目標は、自身が意識を失うことである
  5. 自殺に共通する感情は、希望も救済も無いというものである
  6. 自殺を企図している人に共通する精神状態は不安定で揺らいでいる
  7. 自殺者に共通する認知は視野狭窄である
  8. 自殺者に共通する対人関係上の行動は自死の予告である
  9. 自殺に共通する行動は逃亡である
  10. 自殺には、当事者が過去に直面した難問に対する適応パターンが出現する傾向がある

 

 これらの共通項から、自殺というものがより科学的・具体的に見えてくるのではないでしょうか。

自殺は非常に心理的なものであるということ分かるかと思います。
自殺の原因となるものは、失業や経済的困窮、いじめなど様々なものがありますが、いずれも、それらの状況を当事者がどのように認知し、どのような感情を抱いているのか、という点に集約されます。

 

そして、最終的に自死を選択するという意思決定のプロセスも当事者の認知によるものです。
従って、自殺は最初から最後まで心理的なプロセスの中で進んでいくわけです。
 

 

また、前述の共通項から、自殺というものを取り巻く「目的」や「目標」というものも明確になっています。
自殺は自分の願いが叶わないという認識から、絶望してしまうところからスタートします。
そして、願いが叶わない、抱えている問題が解決できないという困難な状況から脱却する唯一の方法が自殺であるという考えに至るわけです。
そして、目標が意識を失うことになってしまいます。
意識を失うということは、何も考えることがなく、何も感じることがなくなるということです。

 

つまり、絶望感も心の痛みも何も感じない「無」の状態に至るという目標を達成するために自殺を選択するわけです。
よくドラマや映画などで自殺をしようとしている人に対して「生きていれば、必ず良いことがあるよ!
と声をかけることで、自殺を思いとどまらせるというシーンがあるかと思います。
ですが、実際に自殺をしようとしている人は「良いことが無いから自殺したい」というよりも「悪いことがこれ以上、続かないようにするために自殺したい」と考えているケースが多いわけです。

 

つまり、ドラマや映画でよく使われるセリフでは、自殺をしようとしている人を止めるのには不向きなわけです。
とはいえ「生きてさえいれば、今後、何か良いことがあるはずだよ!」というセリフは確証があるものではないものの、全くの嘘ではないはずです。
しかし、自殺をしようとしている人の多くが望んでいる「これ以上、悪いことが続かないようにしたい」という願望は、他者が叶えてあげられるものではないわけです。

 

さらには、今、直面している問題が解決したとしても、次に別の問題が発生する可能性もあります。
自殺しようとしている人は、もうこれ以上、何の問題も抱えたくないとすら考えている場合があり「次のステップに進む」ということさえ、拒んでいるということがあるのです。
 

 

一方で、自殺を考えている人の精神状態は不安定に揺らいでおり、自殺に向かって一直線に進んでいるわけでもないのです。
そのため、この「揺らぎ」にアプローチすることで、自殺を止めることができる可能性が残されています。
前述の
生きてさえいれば、今後、何か良いことがあるはずだよ!」というセリフは「死」への認識から「生」への認識へと、自殺を考えている人の思考を切り替えさせるきっかけになる可能性があります。
自殺を考えている人の精神が「揺らいでいる」状態であれば、その「隙」をついて、考え方をシフトさせることができる可能性があるわけです。
 

 

 

 

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この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部 「つぶやきコラム」は、医療・福祉・心理学・メンタルケアの通信教育スクール「TERADA医療福祉カレッジ」が運営するメディアです。 医療・福祉・心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、調べたいことがある、学んでみたい人のために、学びを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。

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