コラム

ペットと心理学の関係

2022.10.27
  • 条件付け
  • 動物心理学

ペットを飼うことと心理学には、どのような関係があるのでしょうか。 

 

 

犬や猫などのペットを飼っている人は多いかと思います。

では、ペットは人間の心理にどんな影響を及ぼすのでしょうか。
まずは、ペットだけではない動物と心理学の関係から解説していきたいと思います。
 

心理学には動物心理学という分野があります。「動物の心?」と思われるかもしれませんが、人間と同様に動物にも知覚・認知・生理・行動があり、周囲の環境の変化などに対して、適応的に振る舞おうとするという点では共通しています。

 

そして、動物も子どもから大人へと成長する過程で精神発達するため発達心理学の要素があり、群れで行動する動物には社会性があるため、社会心理学の要素もあります。

このように、心理学における動物行動の発生・変容・獲得・発達などの研究を総称して動物心理学とよびます
広義には人間以外の動物を対象としていますが、人間と動物の行動を比較する研究も多く、比較心理学や比較行動学とほぼ同じ意味で用いられています 

 

動物心理学はホイットマンやハインロートクレーグらが最初に研究分野として確立させ、その後ローレンツやティンベルヘンらが発展させました。
ローレンツとティンベルヘン、そしてフリッシュの3名は新しい研究分野としての動物心理学を発展させた功績により
1973年にノーベル生理学医学賞を受賞しています。
なお
前田嘉明が第二次大戦後にローレンツの研究室を訪問した後、帰国後に動物心理学を日本に紹介したことで広まっていきました 

 

また、動物心理学の研究は学習や条件づけなどの研究と脳と神経に関する研究が合わさり、より明確に動物と人間の行動発現の機構解明が進められています。
これらの研究は
相互に影響を及ぼしつつまた進化学遺伝学動物学生態学生理学生化学などの生物諸科学とも密接に関連しながら発展を続けています。 

コンパニオン・アニマル

さて、そんな動物の中でも、とりわけ私たちの生活と密接に関わっているのがペットです。
ペットはコンパニオン・アニマルとよばれることもあり、単に動物という意味ではなく、人間との共生や、家族同然の関係性にあると考えられています。
欧米では約50年前の1970年代から、既にペットに関する心理学的な研究が進められてきました。その結果、ペット(コンパニオン・アニマル)と共に生活をすることで、人間には心身の健康状態の向上や主観的幸福感(w
ell being:ウェルビーイング)の向上対人関係の幅を広げてくれる効果などがあるということが判明しています。
これらは、人間とペット(コンパニオン・アニマル)との間に、絆・愛着・親密性という3つの心理的な影響によって支えられていると考えられています。
 

 

では、日本でも欧米と同様に、ペット(コンパニオン・アニマル)には心身にポジティブな影響があるのでしょうか。
日本で大規模に実施されたペット(コンパニオン・アニマル)の心理的な影響に関する研究では、意外な結果が判明しています。
日本人を対象とした調査研究の結果、ペット(コンパニオン・アニマル)との関係性(絆・愛着・親密性)が強いほど、主観的幸福感(w
ell being:ウェルビーイング)が低いということが判明しています。

 

つまり、欧米の研究結果と日本の研究結果が真逆だったということになります。
では、なぜ、このような結果が出たのでしょうか。
理由には様々な要素があると考えられますが、日本人は特にペット(コンパニオン・アニマル)を溺愛してしまい、その影響で「気軽に外出できない」「仕事中も気になってしまう」などのように、ペット(コンパニオン・アニマル)に依存してしまっている人が、かなりの割合で存在しているということが挙げられます。

従って、ペット(コンパニオン・アニマル)との関係性が強すぎてしまうと、逆に主観的幸福感(well being:ウェルビーイング)が下がってしまうということが起きてしまうわけです。 

いかがだったでしょうか。

本コラムを読んで、ペットと人間の関係性や、ペットの心理的影響について興味・関心をお持ちになった方は、メンタルケア学術学会がペットロス・ハートケアカウンセラーやアニマル・ペットロス療法士などの資格の運営をしていますので、勉強してみてはいかがでしょうか。 

著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

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