心理学・カウンセリング・メンタルケアの専門家には、10月生まれの著名な先生方がいます。
フレデリック・バートレットは1886年10月20日生まれのイギリスの心理学者です。
バートレットは1931年から1951年までケンブリッジ大学で実験心理学の教授を務め、1952年に名誉教授に就任しました。
バートレットは1944年に心理学者のケネス・クレイクとともに医学研究評議会の応用心理学部門の設立に貢献し、後に応用心理学部門の責任者を務めました。
また、1932年にバートレットはイギリスの王立協会フェローに選出されました。
さらに、1948年にはイギリス空軍への貢献により、ナイトの称号を授与され、1952年にはロイヤル・メダル受賞しています。
このように、バートレットはイギリスを代表する心理学者として、王室からもその功績が認められています。
バートレットは記憶・知覚・思考の研究において非常に有益な研究業績を残しました。
記憶の研究においては、心理学者であるエビングハウスによる無意味綴りに関する実験が有名です。
これに対して、バートレットは有意味材料を用いた記憶変容の実験を通してスキーマの概念を提唱しました。
また、社会的知覚の研究に関する研究においても多大な貢献をしています。
社会的知覚とは、社会的事態における行動を解釈する概念の1つです。
基本的には、知覚の社会的決定因という意味と、社会的環境の知覚という意味があります。
社会的知覚の具体的な研究領域としては、印象形成・帰属・対人魅力・偏見などが挙げられます。
印象形成に関する研究では、何事も第一印象が重要であるという日常的な感覚があるように、印象は形成されやすく、しかも変更されにくいということが判明しています。
帰属とは、人々の行動の原因を説明する過程のことであり、原因帰属には、主にその出来事の外的要因に帰属させる場合と、その人物のパーソナリティなどの内的な原因に帰属させる場合とが考えられています。
対人魅力に関する研究では、他者に魅力を認めたり認めなかったりする要因が検討されています。
それらの要因には、他者の容貌を含む身体的要因、対人間の距離の要因である近接の要因、知っていることまたは出会いの頻度による既知性の要因、自分に似た人に魅力を感じるという類似性の要因などが検討されています。
偏見は、社会心理学における中心的研究テーマである態度に関連する概念であり、何らかの集団や個人に対する否定的な感情を意味します。
態度は認知的要素(ステレオタイプ)、感情的要素、行動的要素(差別)からなると考えられていますが、偏見はその中の感情的要素を構成しているとされています。
近年では、偏見のコントロールについての研究もなされており、コントロールされた認知過程が判断や推論におけるステレオタイプの自動的な活性化を修正するかもしれないという研究報告もあります。
これに対して、偏見のコントロールが実際には困難であること、また偏見の意識的処理と自動的処理が異なること、偏見のコントロールには注意資源が必要であることなどが示唆されています。
バートレットが提唱した概念として、彼の名が冠された「バートレット効果」というものがあります。
バートレット効果とは、記憶現象に関するものであり、文章や図形など複雑な内容を記銘した場合、時間経過とともに記銘内容の主要情報が構造化されて保持され、曖昧な情報や意味の少ない情報は忘却されるという現象です。
この現象は、現在では記憶の体制化・スキーマ・スクリプトなどの概念によって説明されます。
バートレットは現在の認知心理学を構成する重要かつ広範な概念を確立させたという意味で、現代認知心理学の父といっても過言ではないでしょう。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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