観光と心理学の間には、どのような関係があるのでしょうか。
長く続くコロナ禍により、気軽に旅行に行くことが難しくなっています。
旅行業界が大きな打撃を受けるだけでなく、私たちも旅行や観光という楽しみを失っている状態が続いています。
失って初めてその重要性に気付くということが多いわけですが、旅行や観光も同じように、行くことが困難になることで、その大切さにスポットライトが当たっているのではないでしょうか。
では、旅行・観光には、心理学的にどのような影響があるものなのでしょうか。
まず、旅行や観光には観光学という学問分野が存在しています。
経済の発達に伴って、単なる移動ではなく、楽しむための旅行・観光というものが普及していきました。
これが単なる移動であれば、より速く目的地に到着するには、より安くたどり着くには、より安全に移動するには、などの観点のみで語られるものとなっていたでしょう。
しかし、ここに「楽しむ」という要素が追加されたことで、より満足できる旅行・観光を実現させるには、どうすればいいのか、という観点が生まれました。
さらには、観光のための開発が進むことで、自然環境が破壊されてしまうという問題も発生してしまいます。
そこで、どのようにして、豊かな自然を守りながら、満足できる旅行・観光を成立させていくのかという研究も進められています。
観光学は前述したような背景を持ちながら、社会学・経済学・経営学・歴史学・統計学・地理学・人類学・都市計画学、そして心理学などの様々な学問分野の観点から、旅行・観光という現象を分析していくものなのです。
日本では、日本観光学会が1960年に設立されており、既に観光学は60年以上の歴史を持っています。
一方、海外では、アメリカのコーネル大学・ホテル経営学部や、セントラルフロリダ大学・ローゼン・ホスピタリテイ経営学部、イギリスのサリー大学、香港理工大学などが有名な観光学研究の大学として設立されています。
このような学際的な特徴を持つ観光学ですが、旅行・観光を心理学的に検討するのが、観光心理学です。
観光では、どこに行くのかという目的地を沢山ある選択肢の中から選ぶことになります。
たとえば、次の大型連休にどこかに旅行に行こうと考えているとしましょう。
もし、新型コロナウィルスの影響が収まったとするならば、国内でも国外でも好きなところに旅行に行けるはずです。
では、ニューヨークに行くのか、パリに行くのか、それとも国内で軽井沢に行くのか、沖縄に行くのか、というように複数ある選択肢の中から1つを選択することになります。
旅行・観光が他の商品・サービスの選択と異なるのは「ニューヨークも沖縄も、どちらも捨てがたいから、どちらも選択する」というようなことは基本的に成立しないということです。
これは、ただ商品・サービスを手に入れることで終わるのではなく、移動・宿泊など様々な行動とそれに伴う時間の消費というものがあるので「1つ」を選択するという要素が旅行・観光では重要となるのです。
そのため、学習心理学・認知心理学・社会心理学などの分野における選択行動や意思決定に関する研究や理論が観光学の分野でも重要となっているのです。
また、最近の研究では、メンタルヘルス・ツーリズムという分野が注目を集めています。
旅行・観光の目的にリフレッシュやリラックスという要素が含まれることが多いでしょう。
では、科学的に旅行・観光には、どのようなリフレッシュ効果やリラックス効果があるのでしょうか。
そこで、特にストレスの低減やメンタルヘルスの改善などに関して、旅行・観光はどのような影響を及ぼすものなのかを研究するのが、メンタルヘルス・ツーリズムなのです。
メンタルヘルス・ツーリズムでは、心理学・精神医学的な観点から、たとえば、ストレスを低減させる目的であれば、どの時期にどこに旅行・観光に行くべきなのか、また、旅行先で何をするのが良いのか、などについて研究が進められています。
このように、私たちの生活に彩を与えてくれる旅行・観光は、観光学として科学的に研究され、さらには、メンタルヘルスの観点からも研究が進められているのです。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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