私たちにとって身近な存在であるテレビと心理学には、どのような関係があるのでしょうか。
最近では、you tubeなどの動画サイトが若者を中心に爆発的な視聴数となっています。
一方で、テレビも変わらずメディアとして重要な役割を担っています。
そんなテレビと心理学には、少なからず関係があります。
テレビと心理学の関係として有名なものとして、アメリカのテレビ番組であるセサミ・ストリートがありますが、このテレビ番組をご存知の方も多いと思います。
実はこの番組は教育心理学の分野で非常に重要なものであり、ちゃんと心理学の辞典にも掲載されているのです。
セサミ・ストリートとは、アメリカで3~5歳児の就学前教育のために作られたテレビ番組であり、チルドレンズ・テレビジョン・ワークショップ(Children’s Television Workshop)が製作をしています。
番組製作にあたっては、教育専門家や調査研究員も関わり、教育と娯楽の効果的な融合が図られ、子どもの注意を引きつけて離さないさまざまな工夫が凝らされています。
日本では1971年からNHKで放送されており(NHKで見たことがあるという方も多いと思います)。
ただし、日本では、幼児番組というより英語教育番組として扱われることが多いものです。
セサミ・ストリートのような教育を目的としたテレビ番組は放送教育というカテゴリーに分類されるものです。
放送教育とは、放送を利用して行われる教育を指す用語であり、VTRによってテレビ番組を録画したもの、各種有線放送の教育利用などが含まれます。
より具体的には、テレビだけでなくラジオ、現在ではyou tubeなどのオンライン・ツールを含む、ありとあらゆる通信媒体から情報を発信し、学校教育や社会教育などの教育内容を拡充したり、教育方法を改善することを目的としたもの、と定義されています。
この定義は日本放送教育学会が1971年に定義したもので、放送メディアの持つ速報性・広範性・具体性・情緒喚起性などの特徴があります。
また、放送教育には、教科書中心になりがちな授業を放送メディアで補う授業改善や、放送の広範性を利用した教育機会の拡大(セサミ・ストリートのコンセプトはここに含まれます)、新しい知識や技能を絶えず提供することによる生涯学習支援などの目的もあります。
放送教育の代表例として、前述のアメリカでのセサミ・ストリートがありますが、イギリスでは1969年に放送大学(Open University)が設立されており、日本も1985年に放送大学が開講されています。
日本の放送大学では、心理学の授業も実施されており、学部には「心理と教育コース」が、大学院・修士課程には「人間発達科学プログラム」や「臨床心理学プログラム」、博士課程には「人間科学プログラム」があり、心理学の勉強をすることができます。
テレビと心理学の関係性の中でよく話題に挙がるのが、テレビの暴力的なシーンを子どもがマネしてしまうのではないかというものです。
この問題には心理学における観察学習や社会的学習の理論が関係しています。
有名な観察学習の実験としては、心理学者のローが1967年に実施した以下のようなものがあります。
1、 大人がモデルになり攻撃的な行動を実演してみせる。
→ 空気で膨らませた人形の頭をハンマーで叩く。
→ 「頭をぶっ壊してやる」と言いながら叩く。
→ 粘土の人形にフォークを突き刺す。
→ 「穴だらけにしてやる」と言いながら刺す。
2、強化条件では、「よくやった」と褒められる。
弱化条件では、「とんでもないことをした」と諌められる。
3、 子どもは①・②の一部始終を観察後、部屋に入って、
同じ玩具(風船人形・粘土人形)で遊ぶ機会が与えられる。
※統制条件として、①・②を全く観察していない子どもが
部屋に入って同じ玩具で遊ぶ機会が与えられる。
実験の結果、強化条件づけのグループに振り分けられた子どもたちは暴力行為を褒められている大人を観察したことによって「自分も同じことをしたら、褒められるかもしれない」という期待感を抱いてしまい、大人をマネして攻撃行動をしてしまうということが判明しました。
このように、観察学習や社会的学習の実験結果から「子どもがテレビ番組の暴力シーンと見て、それが番組内で面白がられたりするというようなポジティブな評価を受けていたら、それを現実にマネしてしまうのではないか?」という危惧が起きてしまったわけです。
その後の研究において、子どもがテレビの暴力シーンをどの程度マネするのかということについては、そこまで簡単なメカニズムではないということも判明しています。
このように、心理学ではテレビのポジティブな側面とネガティブな側面を両方、研究対象として様々なことを明らかにしているのです。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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