食事をすることと心理学にはどのような関係があるのでしょうか。
私たちは常に何かを食べることで栄養を得て活動をしています。
さらには、最低限の栄養補給という意味合いだけではなく、美味しいものを食べたいという欲求も私たちには存在しています。
では、食事と人間の心理にはどのような関係があるのでしょうか。
まず、私たちには食欲というものがあります。
食欲は人間の三大欲求の1つでもあり、生命維持において重要なものとなっています。
食欲に関連する空腹感や満腹感は基本的には脳の中の間脳の視床下部にある食中枢で血糖値などを基にして調整されています。
食中枢が摂食中枢と満腹中枢の2つに分かれています。
摂食中枢に電気刺激が発生すると空腹感と摂食行動が生じ発生し、刺激がなくなることで食欲減退や摂食低下が発生します。
それに対して、満腹中枢が電気刺激を受けると、満腹感が得られて、摂食停止となり、刺激の停止によって過食や肥満が発生します。
そして、食中枢は扁桃体から指令を受けて快・不快(おいしい = まずい)に対応した行動(摂取行動、嫌悪行動など)や自律神経の反応(血圧・呼吸・消化管の反応など)を引き起こします。
さらには、視覚や味覚、嗅覚など感覚器からの情報や、記憶や思考といった認知的な働きや感情の影響も受けます。
誰にでも食べ物の好き嫌いというものがありますが、これは専門用語で食嗜好性とよばれています。
食嗜好性は生得的に決まる要素と学習により獲得される要素、観念的な要素によって決定されると考えられています。
私たちは生得的には甘味・うま味・うすい塩味・うすい酸味が好きであり、濃い塩味・酸味・苦味が嫌いであるという傾向があります。
また、学習の要素としては、食べ物のもつ様々な感覚要素を複合体として捉え、それに摂食中および摂食後の体調なども加えた総合的判断により好き嫌いが獲得されるというメカニズムがあります。
さらに、観念的要素としては、他者からの意見や親からの教育、食品メーカー等による宣伝などが影響を与えると考えられています。
食事と心理学の関係において、食事と関連の強い精神疾患というものもあります。
これは、摂食障害とよばれるものであり、代表的なものとして、神経性やせ症と神経性過食症があります。
神経性やせ症は、必要量と比べてカロリー摂取を制限し、年齢・性別・成長過程(例:育ち盛りの子どもかどうか等)・身体的健康状態に対する有意に低い体重となってしまっている状態です。
有意に低い体重とは、正常の下限を下回る体重で、子どもまたは青年の場合は、期待される最低体重を下回ると定義されます。
また、有意に低い体重であるにもかかわらず、体重増加または肥満になることに対する強い恐怖感があり、体重増加を妨げる持続した行動(激しい運動など)があります。
さらに、自分の体重または体型に関する障害、自己評価に対する体重や体型の不相応な影響、または現在の低体重の深刻さに対する認識の持続的な欠如などの特徴があります。
神経性過食症には、以下で示すような過食エピソードが特徴となります。
① 場所を限定しない(レストラン→帰宅中の路上→帰宅後)
② 制御不能の感覚
③ 食物の好き嫌いは無関係(※むしろ普段は嫌いな食物も)
④ 過食を恥ずかしく思い、隠そうとする
⑤ 体重増加を防ぐための排出行動・パージング
また、体重の増加を防ぐための反復する不適切な代償行動が大きな問題となります。
代償行動とは、例えば、自己誘発性嘔吐、緩下剤、利尿薬、その他の医薬品の乱用、絶食、過剰な運動などです。
神経性過食症の重症度は、この代償行動の頻度によって診断されます。
軽度:不適切な代償行動のエピソードが週平均して1~3回
中等度:不適切な代償行動のエピソードが週平均して4~7回
重度:不適切な代償行動のエピソードが週平均して8~13回
最重度:不適切な代償行動のエピソードが週平均して14回以上
神経性やせ症と神経性過食症に共通する診断基準として、BMI(Body Mass Index)があります。
BMIは一般的な体重管理にも使われる指標であり、適正体重の基準の基準となるものです。
BMIは、体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))で計算され、適正BMIの下限は18.5とされています。
ただし、摂食障害は単にBMIだけで判断して「すごく痩せているから摂食障害」や「とても太っているから摂食障害」というものではありません。
前述のような食行動の異常や排出などの問題行動と合わせて、体重の状態の異常を確認する必要があり、診断基準として設定されています。
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