コラム

宗教心理学とは?

2023.3.9
  • 宗教心理学

心理学には宗教心理学という分野があり、精力的に研究が続けられています。 

 

 

心理学には宗教心理学という分野あります。
宗教心理学では、宗教に関わる個人的体験・信念・行動や、組織・制度としての宗教を心理学的側面から実証的に研究しています。
宗教と人間の心理の問題は、ヴントやジェームズなどの心理学の歴史の初期の研究者が関心を寄せていました。

しかし、1930年代に心理学の世界で行動主義が全盛となると同時に宗教心理学は一時的に衰退しました。
ですが、1960年前後から宗教心理学の実証的研究が盛んになり、専門的な学術雑誌も相次いで発刊されていきました。
そして、アメリカ心理学会(APA)でも、宗教心理学が1つの部会として確立されています。
 

現在の宗教心理学における具体的な研究対象としては、宗教の機能、幼児における宗教的信念の発達、青年期における宗教的社会化、宗教的信念と死生観、主観的宗教体験、回心、宗教組織の社会心理学的側面、宗教と道徳、宗教的信念とストレス対処、宗教と精神障害、「癒し」としての宗教などがあります。 

 宗教心理学において研究対象とされる信念とは、ある対象とその他の対象の価値・概念および属性との関係性に関する総合的な認知のことであると定義されています。
信念は信仰・迷信・偏見・ステレオタイプ・イデオロギー・妄想、さらには知識なども含まれるような非常に幅広い内容のものとなっています。
 

個人が獲得した数々の信念は個人的に整理され構造化され、スキーマやさらに大きなシステムを形成していると考えられています。
そのシステムの全体的構造は、個人的に正しいと見なす信念の組織と個人的に誤りと見なす信念の組織とに分類でき、個人的に重要と見なす信念とそうでないと見なす信念、個人的に確信度の高いと見なす信念とそうでないと見なす信念とにも分類できるとされています。
そして、個人の直接知覚によって形成される信念、社会的推論によって形成される信念、他者が抱く信念を受け入れることによって形成した信念に分類することも可能であるとされています。
 

 信念には様々な心理学的な機能があるとされています。
たとえば、個人の「思考の道具」であり、アイデンティティやパーソナリティの本質的な構成要素となっています。
また、信念は対人的相互作用を経て社会的に共有され、多数の無知やピグマリオン効果、自己充足的予言のような社会的影響やカルトの社会運動を誘導したり、迷信や偏見となり、さらにそこから生じてしまう差別、あるいは個人間や集団間の葛藤を引き起こす原因となることもあります。
そして、信念は態度を構成する一要素であるという考えから、態度の構造や態度変容の研究に含まれることがあります。
社会心理学におけるステレオタイプの研究や認知心理学におけるスキーマの研究が進む中で、社会的認知や意思決定過程などの分野で信念の要素は非常に重要となっています。
 

 宗教に関連する問題として、カルトの問題があります。
カルトとは、ある特徴を持つ集団をさす概念であり、集団のメンバーがある特定の宗教・政治・教育などについて構造化された信念を共有し、メンバー全体がその集団の目標達成に向けて熱狂的に実践するというものです。
また、カルトはカリスマ的リーダーを拝する場合、自集団中心的で他集団に対して排他主義的な場合があります。
 

宗教心理学では、カルトからの脱退のための改心・改宗というアプローチも研究されています。
回心や改宗という現象は、宗教心理学における古典的研究の中心的課題として取り上げられており、青年期や成人期において、それまで分裂していた自己が宗教的実在を把握して統合される過程であるとされていました。
そこから発展する形で、洗脳的技法と訴えられるカルトの集中的な社会的影響力により、回心が外的に誘導される場合のあることが明らかにされてきています。
 

 

 

著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

「つぶやきコラム」は、医療・福祉・心理学・メンタルケアの通信教育スクール「TERADA医療福祉カレッジ」が運営するメディアです。
医療・福祉・心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、調べたいことがある、学んでみたい人のために、学びを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。

関連記事