子育てと心理学の間には、どのような関係性があるのでしょうか。
日本では少子高齢化が進んでいると言われ始めて久しいですが、それでも子育てという問題は常に重要な社会的な関心事となっています。
では、子育ては心理学でどのように研究されているのでしょうか。
発達心理学は胎児期から超高齢期までの、人間の一生をカバーしている心理学の分野です。その中でも、乳児期から幼児期は子どもの発達や心理に関する研究が豊富に実施されています。
乳児期は視覚系・聴覚系を中心とする認知と表象能力の発達、構音の能力、対人的能力の発達が認められます。
また、運動能力については、体幹から周辺への筋緊張とコントロールの広がりが認められることで「首がすわる」状態となり、やがて座位、立位、そして歩行へと発達が進む時期です。
従って、この時期の子育てには、子どもが活発に動き回ることをサポートしつつ、怪我などをしないような工夫が必要になります。
続いて幼児期ですが、二足歩行や話し言葉が獲得される時期になります。
より具体的には、1~2歳頃に安定した直立二足歩行の獲得を基礎として、言語的指示に従って目標をもって歩行することや、方向転換することが可能になってきます。
また、手による道具の操作が可能になるのもこの時期です。そして、3歳頃には、走る・跳ぶ・投げる・打つ・蹴る・捕えるなど運動の基本動作が獲得されるようになってきます。
手や指の微妙なコントロールを必要とする鉛筆等による線描画や折り紙を折るなどの技能も急速に向上しはじめます。特に3~4歳以降、片足とびなどの二つ以上の動作を統合して一つの動作とすることが可能になります。
なお、認知機能についても3~4歳頃に大きな変化を向かることになります。これは「心の理論」とよばれるものとして研究されています。
「心の理論」とは、たとえば、以下のようなストーリーで説明されます。
『太郎君のお母さんは太郎君にお留守番を頼みました。でも、お母さんは心配でした。お母さんが出かけると、太郎君は勝手にお菓子を食べてしまうからです。そこでお母さんは太郎君に分からないように、お菓子をいつもしまってある戸棚から、洋服ダンスの奥に移してから出かけることにしました。お母さんが出かけると、やっぱり太郎君はお菓子を勝手に食べようとニコニコし始めました。』
上記のようなシチュエーションにおいて「Q.太郎君はお菓子を食べる為にどこを探すでしょう?」という問題が出されたとします。
これが3歳と4歳では、大きく回答が異なってくるということが判明しています。
前述の問題に正しく解答するためには、“太郎君の立場になって考える”ということが必要になります。
このストーリーを聞いた側は“お菓子は洋服ダンスの奥にある”という事実を知っているが、太郎君はそのことを知らないという状態です。
そのため、太郎君の立場になることで、“戸棚の中を探す”という正解が導き出せるわけです。これは「心の理論」における他者の思考を推察する能力があってはじめて可能な解答です。
しかし、3歳くらいでは、まだその能力が不十分な場合があり、“太郎君は洋服ダンスの中を探す”と解答することも多いです。
これは“自分が知っていることは他者も知っている”という自分と他者の思考や感情を区別できていないことによって起こるものであると考えられます。
このように3~4歳は認知機能として「自分と他者」や「他者の思考や感情の推測」という重要な能力を身につける時期であるということが判明しています。
この時期の子育てでは、両親を中心とした関係性からさらに発展して、その後の人生全般における様々な他者との良好な関係性を育むためのコミュニケーションが重要になるわけです。
このように、発達心理学では、子育てにとって重要な知見が豊富に含まれています。発達心理学に興味・関心のある方は、こころ検定3級の第1章で概観していますので、勉強してみていただければと思います。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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