心理学者のライトナー・ウィットマーが世界初の心理クリニックをアメリカのペンシルベニアに開設したのが1896年です。
その少し後に「臨床心理学(clinical psychology)」という用語を初めて用いたのもウィットマーです。
ウィットマーは世界で最初の心理学実験室を設立したヴントの下で博士号を取得した心理学者であり、科学者としての視点をしっかりと持った専門家です。
つまり、心理カウンセリングとは最初から「心理学者の仕事」としてスタートしたものであるといえるでしょう。
ジグムント・フロイトがオーストリア精神分析について定義・研究・実践をスタートさせます。
フロイトは無意識に注目し、自律訓練法や夢分析を中心とした精神分析療法を確立させました。
また、フロイトは精神医学の第2の革命とされる「クライエントとの対話」を確立させた人物でもあります。
フランスで義務教育制度を整備するために、アルフレッド・ビネーが世界初の知能検査を開発したのが1905年です。
当時、知的能力障害や神経発達症(発達障害)などの子どもも、全て同じ通常学級で教育を受けていました。
そのため、本人がしっかりと努力して勉強していても、落第や留年となってしまうケースが多くありました。そこで、ビネーは知能検査を開発し、学校のクラス分け(通常学級と特別学級)の基準を確立させたのです。
第一次世界大戦後の兵士の精神的問題を心理学者のマイヤーズが砲弾ショックと名づけました。
その後、この精神疾患は戦争神経症とよばれるようになり、最終的には心的外傷後ストレス障害(PTSD)とよばれるようになります。
当初は戦争のみが疾患の原因と考えられていましたが、後の研究によって災害・事件・事故などのトラウマ経験は全てPTSDの原因となることが判明したのです。
精神医学の分野では、精神疾患患者に対して、脳の一部を切除する精神外科(ロボトミー)が確立・普及しました。
そして、1949年にモニスがその功績によりノーベル生理学・医学賞を授与されています。
また、カウンセリングの分野では、ロジャーズらによる人間性心理学・クライエント中心療法の研究がスタートしています。
◆1949年
アメリカのコロラド大学で開催された専門家会議において、科学者-実践者モデルが確提唱されます。
これにより、心理カウンセラーは心理学者でなければならないという世界基準が確立されます。
時同じくして、1949年には、WHOが疾患の診断マニュアルであるICD-Ⅵにて、初めて精神疾患の項目を設置しています。
精神医学の分野では、この時期に向精神薬の開発により、薬物療法が普及・発展します。
それに呼応する形で、この時期に精神外科が衰退しはじめます。
また、心理カウンセリングの分野では、学習心理学を背景に持つ行動療法がウォルピやアイゼンクによって確立・発展したのがこの時期です。
精神疾患の診断・統計マニュアルであるDSMの第1版が出版されます。
ベックが認知療法、エリスが論理療法について同時期に定義・提唱ました。
これらの理論・療法が後の認知行動療法のベースとなっています。
マイケンバウムが初めて「認知行動療法」という用語を使用し、自己共時訓練やストレス免疫訓練について提唱。
このころから、認知行動療法が確立・発展しはじめます。
DSMの第3版が出版され、ここで精神疾患の操作的診断が確立されます。
同時に各種心理検査も精密化が図られ、より客観的なアセスメントが実施されるようになります。
日本において、臨床心理士の資格認定がスタートしたのが、この時期です。
当初は学校におけるスクールカウンセラーの制度と連動するニュアンスが強いものでしたが、現在では、医療機関でも活躍しています。
第3世代の認知行動療法であるACTやマインドフルネスが発展・普及しはじめたのが、このころです。
日本において精神分裂病の名称が統合失調症に変更されたのが、この年です。変更には差別や偏見を防ぐという目的もありました。
DSMの第5版が出版(日本語版は2014年)されたのが、この年です。
日本語版に関しては、多くの精神疾患の日本語名称が変更されました。
日本において、国家資格である公認心理師の第1回試験が実施されました。
ここから、日本の心理カウンセリングは、より科学的・客観的なものとなり、データや数値を重視するものに変わっていくであろうと予想されます。
これは、まさにSociety 5.0が目指している状況とも合致するものであり、心理カウンセラーにはさらなる活躍が期待されます。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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