心理検査はまず、海外で開発されたものが多く、日本で利用されているのは、その「日本語版」であることが多いです。
そして、海外の「原本」が改訂されると、それに合わせて日本語版も改訂されます。
心理検査は古いものでは50年以上前に開発されたものもあり、その当時の日本の社会的・文化的な背景を踏まえて日本語版の作成が行われています。
しかし、50年間という長い時間があれば、その間に心理学的な研究も進み新たな理論が構築されます。
同様に、日本の社会的・文化的な背景も大きく変化します。これらを考慮して、最新の研究成果と時代のニーズに合わせて、心理検査が改訂されることがあります。近年、改訂・新版が開発された心理検査の代表的なものに、以下のようなものがあります。
POMSは緊張・抑うつ・怒り・活気・疲労・混乱の6つの因子が同時に測定できる心理検査です。
POMSの「M」は「Mood」のことであり、一時的な気分・感情を測定することを目的としています。
POMSでは、過去1週間の自分の「気分の状態」について、65個の質問に回答する形式です。
ネガティブな感情を症状とする精神疾患には、うつ病・全般不安症・パニック症・心的外傷後ストレス障害など様々な種類があります。
しかし、個々のクライエントで、抱えている感情の種類や強度が異なります。POMSは感情の種類や強度についても把握することができるのです。
また、活気というポジティブな感情についても把握・評価できるのも特徴です。
POMSは医療保険の対象となっており、医療機関で実施されることも多いです。
このPOMSは2017年に「POMS2」という新版が開発されました。
変更点としては、質問項目の変更・標準化、7番目の尺度である「友好」の追加、「TMD得点」(総合的気分状態得点)の標準化、13歳から実施可能となり対象年齢が拡大(青少年用と成人用の2タイプ)、「今日を含めて過去1週間」のほかに、「今現在」あるいはその他の希望の時間枠を指定できる時間枠の設定などです。
エゴグラムは交流分析の理論に基づいて開発されたパーソナリティ検査であり、53問の質問に回答する形式です。
エゴグラムはCP(批判的な親)、NP(養育的な親)、A(冷静な大人)、FC(自由な子ども)、AC(順応した子ども)の5つの自我状態を把握・評価することができます。
エゴグラムは視覚的で分かりやすく自我状態の特徴を捉え、それらのエネルギー量(発生頻度)の高低を棒グラフにすることができます。
これらの結果から、自分のパーソナリティ特性や行動パターンに気づき、今後の自己成長をはかる手がかりとして利用できます。
また、他者との違いに気づき、周囲との対人関係・コミュニケーションスタイルを見直すきっかけとしても利用できます。
TEGも医療保険の対象となっています。
TEGの最新版は2019年に開発されたTEG-3です。TEG-3では旧版のTEG-2からの変更点として、質問項目を変更し新たに標準化、新しいテスト理論である項目反応理論の採用などです。
MMSEは認知機能の障害の重症度を把握・評価するための心理検査として、世界的に利用されており、短時間で簡便に実施できるという特徴があります。
また、下位検査項目として、時間に関する見当識、場所に関する見当識、記銘、注意と計算、逆唱課題、再生、呼称、復唱理解、読字、書字、描画 提示などがあり、多角的に認知機能を評価することができます。
また、医療保険の対象ともなっており、医療機関において認知症の診断・重症度評価に活用されることが多いです。MMSE-Jは2019年に改訂版が開発されました。
改訂版では、最新の研究に基づいて基準サンプルの見直し、一部の下位検査項目の実施方法を変更、カットオフ・ポイントの検証などが実施されています。
今回、解説をした各種心理検査や心理アセスメントについては、こころ検定1級(メンタルケア心理専門士)のテキストである精神医科学緒論で概観しています。ご興味・ご関心がある方は、是非、勉強してみていただければと思います。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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