心理学・カウンセリング・メンタルケアの専門家には、9月生まれの著名な先生方がいます。
イワン・パブロフは1849年9月14日生まれのロシアの生理学者・心理学者です。
パブロフは貧しい幼少期を過ごし、当初は教会の司祭になる目標を持って勉強をしており、1864年に神学校に進学しています。
その後、1870年にロシアのサンクトペテルブルク大学に進学して医学の道に進み、外科医になります。
1876年には、ロシア軍の医学校に進学し、1879年に医師免許を取得しています。
そして、ロシアの生理学研究所に就職し、ここから研究者としてのキャリアを本格的にスタートさせます。
1883年に博士号を取得し、1884年にはドイツのライプチヒ大学に留学しています。
ドイツのライプチヒ大学と言えば、世界で最初の心理学実験室が開設された大学であり、科学的な心理学の第一人者であるヴントが教授を務めていた大学でもあります。
留学中のパブロフが在籍していたのは、ヴントや心理学と直接関係のある学科ではありませんでしたが、当時の最新の科学的知識を有するヨーロッパのアカデミックな文化に触れ、見識を広めたのです。
留学から帰国した後、1888年にパブロフはいよいよ消化に関する生理学的研究をスタートさせます。
その過程で、1890年にはロシアの軍医大学校の薬理学教授に就任し、1891年には実験医学研究所の生理学実験室の室長にも就任しています。
この間も精力的に消化に関する研究を継続していました。
この消化に関する研究は世界的にも注目を集めており、1893年にはノーベル賞の設立のきっかけとなったアルフレッド・ノーベルから、パブロフは研究助成のための寄付金をもらっています。
この寄付金はパブロフが室長を務めている医学研究所の規模を2倍にできるほどの非常に大きな金額でした。
1897年にパブロフは『主要消化腺の働きに関する講義』という書籍を出版しました。
この本は1899年にはドイツ語に翻訳され、ロシア以外でも専門書として広まっていきました。
そして、1902年に唾液が口の外に出るよう手術した犬で唾液腺に関する生理学的な研究をしている最中に、飼育係の足音で犬が唾液を分泌している事を発見します。
これが条件反射や条件づけという学習心理学の基礎となる概念のきっかけとなったのです。
また、この条件反射や条件づけの理論が発展する形で、行動療法や認知行動療法などの心理カウンセリングの手法も確立されていきました。
パブロフの研究がなければ、現在のカウンセリングはなかったかもしれないわけです。
パブロフはまず消化に関する研究の功績から、1904年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
これはロシア人として初のノーベル賞受賞となる記念碑的なものでもありました。
また、ノーベル賞授賞式では、本論である消化に関する研究の話題よりも、条件反射に関する発見の方が、オーディエンスが聞きたいテーマなのではないかと考えたパブロフは授賞式の場で条件反射に関する演説をメインに行いました。
ノーベル賞のロシア人初受賞という快挙を成し遂げたこともあり、1907年にパブロフはロシア科学アカデミーの会員に選出されます。
その後も、パブロフは生理学的な研究を並行して、自らが発見した条件反射に関する心理学的な研究を続けていきます。
しかし、1924年にロシアのレニングラードで大規模な洪水が発生し、パブロフが実験で使用していた犬が溺死しかけるという出来事がありました。
幸いにして、犬が死んでしまうことはなかったのですが、実はこの出来事がきっかけとなって条件反射に関する新たな発見へとつながりました。
洪水の影響で、それまで定期的に実施されていた実験ができなくなりました。
その結果、それまで条件づけで獲得されていた行動(反応)が変化したり消滅してしまったのです。
これが学習心理学における消去や消去抵抗、自発的回復などの概念の発見につながりました。
パブロフが行った数々の実験の影響を強く受けている学習心理学は、こころ検定4級の第1章で概観していますので、興味・関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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