心理学・カウンセリング・メンタルケアの専門家には、11月生まれの著名な先生方がいます。
ロバート・ザイアンスは1923年11月23日生まれのポーランド出身・アメリカで活躍した社会心理学者です。
ザイアンスはアメリカのミシガン大学で1955年に博士号を取得し、1961年からミシガン大学で教授を務めています。
代表的な研究として、社会心理学の古典的研究テーマであった社会的促進現象について、心理学者のハルとスペンスが提唱した動因理論によって統合的に説明したものがあります。
また、対象への接触回数が増すと好意度も増加するという単純接触仮説を提唱し、対人魅力の研究にも貢献しています。
さらには、知能水準と家族数、出生順位との関係について分析もしています。
ザイアンスの研究において、特に注目されているのが単純接触効果に関するものです。
単純接触効果とは、特定の中性刺激に繰り返し接触するだけで、その刺激に対して好意的な態度が形成されるという現象です。
言語刺激・視覚的刺激・聴覚刺激・現実の人間などのいずれが刺激になった場合にも認められることが判明しています。
つまり、テレビのCMで度々見かけた、毎日のように歌を聞いていた、毎日のように会っていたなどのように、繰り返し、繰り返し「接触」しただけで、私たちはそのモノや人を好きになってしまうということです。
これは、商品・サービスの販売などにも当然当てはまりますが、それ以外の様々な事柄にも影響します。
たとえば、選挙を考えてみましょう。
複数の候補者が立候補している状況で、特定の1人の候補者だけが頻繁にTV番組に出演したり、CMを放送したとしたら、どうなるでしょうか。
元々、その候補者のことが「好き」で応援していた人には、さほど影響はなく、そのまま投票をするかと思われます。
しかし、特にその候補者に対する事前の好悪がない人(候補者の存在が中性刺激となっている人)にとっては、どうでしょうか?
何度も何度も、その候補者を見るたびに、単純接触効果の影響で、その候補者(中性刺激)に対して好意的な態度を持ってしまう可能性があります。
これが、今まで知らなかった候補者のマニフェストなどを吟味した上で、有権者側の態度が変わったのであれば問題ありません。
ただ、有権者の中には、あまり各候補の主張や政策を吟味せずに、何となく投票してしまう人もいるでしょう。
この「何となく」の部分を単純接触効果が大きく引っ張ってしまうと、テレビに沢山出演することができる候補者が圧倒的に有利になってしまいます。
このような選挙における単純接触効果を防ぐために、選挙期間中は候補者のメディアへの出演は抑制され、仮に出演することがあったとしても、その場合は候補者全員が平等に出演し、平等に話したり、カメラに映ったりしなければならないというルールが設けられています。
また、ザイアンスはグレッグ・マーカスとの共同研究として、兄弟間の出生順や家族の規模が知能指数に与える影響に関する集合モデルという数学的なモデルも提唱しています。
ザイアンスは、子どもが生まれる環境が知的であれば、子どもの知能に影響が及ぼされるだろうと考えました。
第1子は自分以外に子どもがいない家庭に生まれるのに対し、以降の子どもたちは大人と子どもが交じりあっている家庭に生まれることになります。
家族の規模が大きくなるほど、家族の知能指数平均値は下落し、大家族の子どもたちは知能指数が若干低めになる可能性があると考えました。
末っ子は、自分より小さい子の世話をする機会がないので、さらにもう少し低めの値になるのではないかとも述べています。
しかし、研究の結果、このような出生順位と知能指数の関係は、効果が及ぶ範囲はごく限られたものに過ぎないことが判明しており、知能指数得点にして3ポイント程度の幅のうちに収まってしまうということが明らかになっています。
単純接触効果などの社会的な要素については、こころ検定4級の第5章で概観していますので、興味・関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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