心理学・カウンセリング・メンタルケアの専門家には、3月生まれの著名な先生方がいます。
フィリップ・ジンバルドーは社会心理学の分野で様々な研究をしたことで有名です。
心理学・カウンセリング・メンタルケアの専門家には、3月生まれの著名な先生方がいます。フィリップ・ジンバルドーは1933年3月23日生まれのアメリカの社会心理学者です。
ジンバルドーはブルックリン大学を卒業後、イエール大学の大学院を修了し、同大学で博士号を取得しています。その後、ニューヨーク大学で教鞭をとり、1968年にはスタンフォード大学の教授となっています。さらに、スタンフォード大学の名誉教授にも就任しています。
ジンバルドーの行った研究で良い意味でも悪い意味でも有名なのが、スタンフォード監獄実験とよばれるものです。これは、一般の実験参加者を囚人役と看守役に分け、それぞれが、その役割を演じる(ロールプレイング)というものです。
この実験の目的は、一般の人々が特殊な肩書きや地位を与えられことにより、その役割に合わせて行動してしまうのではないかということを検討するものでした。実験の結果、時間が経過するにつれて、看守役の参加者はより看守らしく、囚人役の参加者はより囚人らしい行動をとるようになるということが判明しました。
これらの研究成果は、人間の態度や行動が社会的な要素が強く影響し、本来の個人のパーソナリティすらも変化してしまうということを示唆しています。また、実験の手続きやその影響から、倫理的な問題についても議論をよび、批判の声も多数挙がりました。
ただし、近年、スタンフォード大学が公開した実験時の録音テープの内容から、演技指導的な指示があったことが疑われるような内容が含まれていることが判明しました。そのため、実験結果そのものの信頼性が疑われる事態にも発展しています。
この他にもジンバルドーは様々な研究を実施しています。たとえば、没個性化に関する研究です。没個性化とは、集団においては個人と異なり、普段の状況では抑制されていた非合理的・刹那的・攻撃的・反社会的な行動が発生しやすくなるという現象です。
この没個性化は、最初に心理学者のル・ボンによって群集行動の分析の中で導入された概念であり、その後もフェスティンガー・ペピトーン・ニューカムらは、集団において人が個人として見られず、注目されていない状態が没個性化の状態であると定義をしています。
そんな中で、ジンバルドーは、普段の抑制が解かれた行動が発生する全体プロセスそのものを指す概念が没個性化であり、その過程では匿名性などの影響により自己評価や社会的評価の関心が低下し、罪や恥などによる統制が弱まると述べています。
その後も、没個性化の研究は自己注意理論の観点から研究が展開されており、没個性化を集団凝集性や集団活動によって自己注意が低下した状態と捉え直したり、私的自己への注意の低下が没個性化であり公的自己への注意の低下による効果は没個性化と無関係であるという見解も出ている。
さらには、社会的アイデンティティ理論に立脚する研究者からは、従来の研究には内集団 = 外集団という集団間の視点が欠けていることや、没個性化状態にある人は個人的アイデンティティが低下している代わりに、社会的アイデンティティが顕現化しており、その際の内集団規範への同調が強まっているとの説明も可能ではないかという意見もあります。
また、ジンバルドーはカルトについても研究しています。カルトとは、ある特徴をもつ集団をさす概念であり、集団のメンバーがある特定の宗教・政治・教育などについて構造化された信念を共有し、メンバー全体がその集団の目標達成に向けて熱狂的に実践するというものである。また、カリスマ的リーダーを拝する場合や、自集団中心的で他集団に対して排他主義的な場合もあるとされています。
ジンバルドーが研究していた社会心理学については、こころ検定4級の第5章で概観していますので、興味・関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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