コラム

色の心理学

2022.2.24
  • 生理心理学
  • メンタルケアカウンセラー(R)

色を選ぶとき人は直観で決めていると考えられがちです。
心理学では色や色彩について、どのように捉えられ、研究されているのでしょうか。

心理学において、色・色彩は、基本的な部分は生理心理学や知覚心理学で研究されています。そこから派生して、色・色彩をどのように感じるのか、どのようなイメージを持つのかなども研究されています。

【生理心理学における色彩】

生理心理学とは、緊張して冷や汗をかいたり、恥ずかしい経験をして顔が熱くなったりといった心理状況から生じる生理現象を科学的に解明する学問のことをいいます。
生理心理学では、歴史的に3つの色に関する仮説が提唱されてきました。

■三原色説

最初に提唱されたのが三原色説です。これは、目の網膜には赤・青・緑の三原色に対応した3種の粒子を受容する器官があると仮定しており、各粒子は光の振動と完全に同調していなくても、同調の程度によって様々な振動をするというものです。

■反対色説

 

次に提唱されたのは反対色説です。これは、人間の色覚は対をなす6個の基本的な感覚(黒・白、青・黄、緑・赤)の3対の過程から成立しているというものです。網膜には、それぞれの基になる黒・白物質、青・黄物質、緑・赤物質の3種類の視物質が存在しており、反対色説は、その網膜視物質が光化学反応を起こすことによって、6個の感覚が生じると仮定しています。

■段階色説

前述の三原色説には、実験的に明らかになった混色という現象がメカニズムの根拠の1つとなっています。一方で、反対色説はあらゆる色が赤・緑・黄・青の4種の色およびその組合せで説明可能であるという観察から導き出した事実から推測された仮説です。
その中で現在、最も有力とされているのが、段階説です。これは、人間の色覚機構に2つ(あるいはそれ以上)の処理段階で構成されているというものです。つまり、前述の三原色説と反対色説を統合したもので、三原色説的な処理過程を経て、反対色説的な処理過程に出力を送るという形で、処理過程が階層性を持つというものです。様々な研究の結果、網膜の錐体という部分では三原色説的な処理がなされ、それ以降の神経節細胞の段階では反対色説的な処理がなされることが実証されており、段階説が最も有力な説であるということが証明されています。

 

【知覚心理学における色彩】

知覚心理学とは、人間の知覚(視覚・聴覚・嗅覚など)の在り方を研究する学問です。
【参考】実はかき氷のシロップは同じ味!味が違うように感じてしまうのはなぜ?
知覚心理学における色彩に関しても3つの項目をご紹介します。

■暖色と寒色

 

これは観察者に心理的効果として暑い・暖かい印象を与える色暖色、て反対に寒い・冷たいという印象を与える色のことを寒色とよぶというものです。一般的に、赤系統や黄系統の色が暖色、青系統の色が寒色として知覚されることが知られています。

■膨張色と収縮色

 

これは、物理的に同じ面積であっても、その色によって大きく見える色と小さく見える色です。前者は膨張色、後者は収縮色とよばれます。一般的に、赤系統や黄系統の暖色は膨張色、青系統は収縮色です。ただし、色の内容と無関係に、明るい色は膨張色になりやすい傾向があります。

■進出色と後退色

これは、物理的に等距離にある物体でも、その色によって手前にせり出して見える色と、後ろに引っ込んで見える色です。このうち前者が進出色、後者が後退色とよばれます。一般的に、赤系統や黄系統が進出色、青系統が後退色です。また、色の内容とは無関係に、明るい色の方が暗い色よりも進出して見えるという傾向があります。

 

以上の心理学から見る色彩についていかがだったでしょうか。
色の好みは人によってそれぞれだと思いますが、研究の結果、ある特定の色が好まれやすいということが判明しています。国や地域、民族などの社会的な要素による違いはあるものの、基本的には人間は青系統の色を好む傾向があるようです。

中でも、色と感情に関する研究も行われています。これは、色彩感情とよばれるもので、色彩によって生ずる広義での心理的な効果のこと全般を指します。色彩の与える心理的な効果は、個人差や地域・文化・社会による差などの影響も認められるものの、ある程度の普遍性もあることが判明しています。

色や色彩などに関する分野である知覚心理学は、こころ検定4級の第4章で概観していますので、興味・関心のある方は、是非、勉強してみてください!

 

著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

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