心理学の一分野にパーソナリティ心理学というものがあります。
パーソナリティ、つまりは、人格や性格などの「その人らしさ」を研究の対象とした心理学の領域がパーソナリティ心理学です。
「その人らしさ」というものを扱うことから、パーソナリティ心理学は他の心理学領域と比べて、個人差に対する関心が非常に高いものとなっています。
日本には、日本パーソナリティ心理学という学術学会があり、精力的に研究活動が実施されています。
2018年度には8月に年次大会が開催されました。
パーソナリティの定義として「人間の具体的な振る舞い・言語表出・思考活動・認知・感情などに時間的・空間的一貫性を与えているもの」とされています。
時間的一貫性とは、多少の変化や波はあっても、時間の経過によって変化することがあまりないことを意味します。
また「空間的一貫性」は、多少の違いはあっても、ある場面や状況で変化することは少なく、かなり共通した特徴が認められるということを意味します。
今,目の前にいる「山田太郎さん」の言動にうかがえる「太郎さんらしさ」は「山田太郎さん」という個人において、ずっと以前から続いてきたことであり、明日も一週間後も、おそらくそのままであろうと予測することができます。
同様に、ある状況における「山田太郎さん」の振る舞いの特徴は、他の状況でもほぼ同じであろうと期待できるはずです。
むしろ、昨日までの「山田太郎さん」とは全く別人のような振る舞いが観察されれば、周囲の他者は大きな違和感と強い不安を覚えるかもしれません。
また「山田太郎さんは、どんな人ですか?」と聞かれた際、その人の外見的特徴を記述するのではなく、その人のパーソナリティを端的に説明するような特徴を述べるのが一般的です。
このように、パーソナリティとは私たち誰もが「実体のあるもの」として、人間の個性の中核をなすものとして認識しているといえるでしょう。
パーソナリティに関する興味・関心は科学的な心理学の誕生以前から連綿と続いており、それは人間の個性の違いに対する興味・関心が非常に高いということを示しています。
古代ギリシアや古代ローマの時代には既に「快活」「冷淡」「易怒」「抑うつ」といったパーソナリティの特徴を体液のバランスで理解しようとする体液説というものがありました。
その後、かなり時代を下り、科学的な心理学が誕生してからも、パーソナリティに関する研究は続けられました。
パーソナリティには、顔や指紋のように1つとして同じものはないということは一般的にも学術的にも納得がいく考え方です。
しかし、それを体系化・カテゴライズし、学問として整理・記述するための方法は大きく分けて2つあるとされています。
1つは、いくつかのパーソナリティの典型を想定し、いずれの典型に近いかという発想から捉える類型論、もう1つはパーソナリティをいくつかの構成要素(次元)に分け、それぞれを記述することで全体を捉えようとする特性論です。
類型論で最も有名なのがクレッチマーによる分裂気質・循環気質・粘着気質という分類です。
また、科学的には証明されていませんが、血液型による性格診断というものも類型論に分類されるといえるでしょう。
血液型がパーソナリティを規定することはないと実証されているのにもかかわらず、信じている方が多いのは、少数の類型(タイプ)で分類が可能であるということが関係していると考えられています。
一方、特性論では「外向・内向」(向性)、「神経症傾向」 ・「気分の易変さ」といった複数の特性をそれぞれ記述することでパーソナリティ全体を説明する方法をとります。
類型論の方が個性を直観的に捉えやすいという特徴があり、特性論は細かな違いを記述し、定量化することに効果的であるという特徴があります。
このように、パーソナリティに関する研究は太古の昔から進められており、現在ではより洗練された形で、職業選択や進路指導など日常生活の様々な場面で活用されています。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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