コラム

吊橋効果とは?

2023.4.27
  • 経済心理学
  • 帰属

心理学では有名な実験で吊橋効果がありますが、これはどのような現象なのでしょうか。 

 

 

吊橋効果」という言葉を聞いたことだけはある、という人は多いのではないでしょうか。
しかし、具体的にどのような現象なのか、どんな実験が行われたのは知らないという人も多いかと思います。
今回は有名だけれども、意外と知られていない吊橋効果について解説していきたいと思います。
 

まず、なぜこの「吊橋効果」の実験が行われたのかというきっかけですが、それは帰属という概念についての研究でした。
人間は「なぜ、 そう評価・判断したのか」という理由を考えて行動しています。
これは帰属とよばれ、自他の感情・態度・ 行動の原因に対する推論であると定義されます。
しかし、帰属が誤ってしまう誤帰属という状態が発生することがあります。誤帰属に関する実験として、ドナルド・ダットンとアーサー・アロンが実施した吊橋と固定された橋を使ったものがあり、これが吊橋効果の実験なのです。
 

この実験の参加者は不安定に揺れる吊橋を渡る群としっかりと固定された橋を渡る群の 2群に分けられ、それぞれ橋の中央へ向って進みます。
橋の中央部分には実験協力者の女子学生がおり、参加者にアンケートへの協力をお願いしてきます。
アンケート回答後、協力者の女子学生は参加者に対して「もし、アンケート結果が気になるのであれば、この電話番号に連絡してくれれば私が結果をお伝えします」と述べ、電話番号の書かれたメモ用紙を渡そうとします。
実験ではグラグラと揺れる吊橋としっかりと固定された橋において、電話番号の書かれたメモを受け取った参加者の割合と実際に電話をかけてきた参加者の割合を検討しています(ちなみに、実験参加者は全員男性です)。
 

 

実験における条件の違いは吊橋と固定橋という点のみです。
しかし、メモを受け取った割合にはほとんど差がないものの、実験後に電話をかけてきた割合には大きな差が発生するという結果が出ました。
この差は、アンケートを実施する女子学生に対する印象(魅力)が吊橋と固定橋というコミュニケーションの場所・状況の違いによって変化したからだと考えられます。
吊橋は高い場所にあり、常にグラグラと揺れており、参加者の心拍数は増加します。
この状態で女子学生からアンケート調査への回答を依頼されるのですが、参加者は自分がドキドキしているという生理的な状態の原因を「不安定な吊橋」という 要因ではなく「女子学生の魅力」という要因に帰属した可能性が高いと考えらます。

つまり、吊橋を渡った参加者の半数が自身の心拍数増加という生理的変化が女子学生の魅力によるものであると帰属し、もう一度、女子学生とコミュニケーションを取るために電話をかけたのではないかと考えられるわけです。
一方で、固定橋は揺れることもなく安定しているので、心拍数への影響がなく、電話をしてきたのは純粋にアンケート結果への興味からだと考えられます(実施されたアンケートそのものは、結果の重要性が高かったり、どうしても結果を知りたくなるようなものではありません)。 

 

このように、吊橋効果の実験では、2つの事柄が明らかになっています。
1つは、人間は自分の今の気分などの「理由」について、実は正確に把握することができない、ということです。
心臓がドキドキするという生理的な反応からくる「興奮」という感情がどんな理由で起きているのか、自分自身に起きていることなのであれば、なぜそうなったのかは分かるはずだと思うでしょう。
しかし、私たちは自分の身に起きたことの「理由」ですらも、間違った判断をしてしまう可能性があるのです。
 

 

もう1つは、人間は前述のように誤帰属から、間違った判断・評価をしていまい、それが意思決定や選択行動にも影響してしまう可能性があるということです。
たとえば、もし、アンケートを実施していた女子学生が何かの商品・サービスを販売してきたとしたら、どうでしょうか。
普段なら購入したりしない商品・サービスでも、吊橋効果の影響で購入するという選択をしてしまうかもしれないわけです。

これは、たとえ、女子学生が魅力的な人物であったとしても、商品・サービスの品質とは無関係なので、やはり誤った選択をしてしまっている可能性があるわけです。 

 

このように、吊橋効果とは生理心理学や社会心理学という観点からだけでなく、経済心理学(行動経済学)の観点から、消費者行動とも関連が深いものなのです。 

 

 

著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

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