ドナルド・ブロードベンドは5月生まれの著名な認知心理学の専門家です。
心理学・カウンセリング・メンタルケアの専門家には、5月生まれの著名な先生方がいます。
ドナルド・ブロードベンドは1926年5月6日生まれのイギリス出身の実験心理学者であり、選択的注意の研究で有名です。
ブロードベンドの功績は2002 年に発行された『Review of General Psychology』における「20世紀で最も引用された心理学者」のランキングで 54 位となっており、認知心理学の分野を代表する研究者であるといえるでしょう。
ブロードベンドは人間 = 機械関係の問題に実験心理学を応用し、自分自身を「工学心理学者」(engineering psychologist)であると述べています。
また、工学が人間社会の経済的な向上に着実に寄与してきた過程において、工学心理学は人間の心理に対して新しい理論的見通しを提供することができる学問分野であるとも述べています。
ブロードベンドはイギリスのケンブリッジ大学に入学し、様々な学問分野に興味・関心を示しました。
そして、アメリカに留学して帰国した後、心理学を専門とすることを決めました。ブロードベンドは実験心理学者であるフレデリック・バートレットに師事し、彼の下で研究者としてのキャリアをスタートさせました。
フレデリック・バートレットはイギリスの心理学者であり、1931年にケンブリッジ大学の教授に就任した後、1952年には名誉教授になっています。
バートレットは記憶・知覚・思考の研究、なかでも社会的知覚の研究と日常場面における記憶研究において多大な功績を残しています。
また、認知行動療法においても重要な概念となっているスキーマを提唱し、現在の心理学における認知・記憶・言語の研究の基礎を築いた人物でもあります。
ブロードベンドは認知心理学・知覚心理学に関する研究を進めていきますが、そのきっかけの1つは師のバートレットも従事していた軍事関係の研究でした。
ブロードベンドは飛行隊の飛行機と管制センターの間でより円滑なコミュニケーションや作戦指示をするためのシステムを開発したいと考えており、そのためにパイロットや管制官の認知能力や知覚についての研究を実施しました。
より具体的には、騒音・ノイズが作業効率に及ぼす影響の検討、会話に関する人間の知覚、注意と覚醒の研究などがあります。
特にブロードベンドは二分聴法(両耳分離聴法)と選択的注意に関する研究が有名であり、師であるバートレットとともに、この分野の先駆者となっています。
選択的注意とは多くの情報が存在する中で、いくつかの特定の情報のみを意識することを指す人間の注意機能の1つです。
パーティ会場のように何人もの声が同時に聞こえてくる騒然とした場面であっても、特定の人との会話に加わりその内容を理解することができる。
このように特定の情報に選択的な注意を向け、他の情報を無視することができるというカクテルパーティ効果が選択的注意の最も分かりやすい例の1つです。
ブロードベントは両耳分離聴法による記憶範囲分離実験を実施し、人間を情報通信システムになぞらえたフィルター・モデルを提唱し、注意に関する研究の新しい理論を提唱しました。
ブロードベンドはこれらの一連の研究を新たに設立された応用心理学研究所(APU ; Applied Psychology Unit)で実施していました。
そして、これまでの研究成果をまとめ、 1958年に『Perception and Communication』を出版し、同年に応用心理学ユニットのディレクターとなりました。
ここで、ブロードベンドは世界の認知心理学・応用心理学を主導していく立場となっていきます。そのご、さらなる研究のため、ケンブリッジ大学を離れたブロードベンドは1974 年にオックスフォード大学に移り、そこで教授職を務めています。
ブロードベンドが研究していた認知心理学については、こころ検定4級の第2章で概観していますので、興味・関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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