コラム

ブランド・イメージと心理学の関係

2023.8.24 心理
  • 産業・組織心理学
  • 心理

商品のブランドに対するイメージについて、心理学では研究が実施されています。 

 

 

 みなさんには、好きなブランドの商品はあるでしょうか。
もし、あるのであれば、そのブランドをなぜ「好きなのか?」をじっくりと考えてみたことはあるでしょうか。
好き・嫌いという態度や、その態度に基づく意思決定や購買行動について、主に産業・組織心理学で研究が実施されています。
産業・組織心理学では、より具体的に人事・組織行動・作業・消費者行動の4分野について研究が進められており、商品のブランドなどに関しては、消費者行動に関する研究として実施されています。
 

 

消費者行動研究では、消費者の商品・サービスの購買・使用行動に関連する情報処理や意思決定の心理的・行動的な過程全般対象としており、マーケティングや宣伝・広告などにその知見が活かされています。
消費者行動研究では、心理学的(社会心理学的)な要因を総合的にモデル化することで、消費者の購買動機・広告効果プロセス・商品イメージ・商品ロイヤルティ形成過程などをより正確に理解することができます。
 

 

前述の消費者行動研究の一環として実施されているのが、商品イメージ・商品ロイヤルティに関する研究です。
この中で、ブランド・パーソナリティという概念があります。
これは、人間にも性格的な特徴があるように、商品などのブランドにも性格があるというものです。
たとえば、特定のブランドのバッグに対して「親しみやすい」「素朴」「真面目」などの、まるで人間に対して抱く印象を持つことがあるのではないでしょうか。
こういった、ブランドに対する性格特性的なイメージをブランド・パーソナリティとよびます。
研究の結果、私たちはブランドに対して何らかのパーソナリティを想定しており、現在の自分や理想の自分と合致する商品を選択・購入する傾向があるとされています。 

 

ブランド・パーソナリティに関する大規模な研究として、1997年にアメリカで1,200名を対象に服・歯磨き粉・食品・クレジットカードテレビ局などの114項目のブランド・パーソナリティを調査したものがあります。
その結果、1997年当時におけるアメリカのブランド・パーソナリティは以下のような5つに大別されることが判明しました。
 

 

  1. 誠実:実際的な・正直な・健全な・陽気な 
  2. 興奮:大胆な・精力的な・想像的な・現代的な 
  3. 能力:信頼できる・知的な・優秀な 
  4. 洗練:上流階級の・魅力的な 
  5. 無骨:アウトドアな・タフな

そして、同時期にスペインと日本でも、ブランド・パーソナリティの大規模調査が実施されました。
その結果、アメリカのブランド・パーソナリティと、スペイン・日本のブランド・パーソナリティは少し異なっていることが判明しました。
アメリカが誠実・興奮・能力・洗練・無骨の5因子であったのに対し、スペインは誠実・興奮・「平和」・洗練・「情熱」の5因子、日本は誠実・興奮・能力・洗練・「平和」の5因子であることが分かりました。
すなわち、ブランド・パーソナリティは社会や文化、国や地域によって若干、異なるということが分かったわけです。
 

 

また、人間のパーソナリティとブランド・パーソナリティの比較研究も実施されています。
人間のパーソナリティ特性については、主要5因子モデル(ビッグ・ファイブ)を取り上げています。
主要5因子理論(ビッグ・ファイブ)は、心理学者のゴールドバーグが提唱したもので、過去の特性次元研究や対人認知研究などの数多くの研究報告から外向性、神経症傾向、開放性、協調性、誠実性の5つの因子(次元)を測定・評価することが人間のパーソナリティを最もよく説明できるとしています。
そして、これら5つの因子(次元) をビッグ・ファイブとよび、ビッグ・ファイブに基づいたパーソナリティ理論を主要 5因子モデルとよびます。
その後、同様の研究が広く国際的に実施され、ビッグ・ファイ ブは国や文化、言語が異なっても安定してパーソナリティの測定・評価に利用できることが判明しています。
 

 

 さて、このビッグ・ファイブとブランド・パーソナリティの研究ですが、以下のような関係性が判明しています。 

 

  • ブランド:誠実性 【対応】 ビッグ・ファイブ:協調性 
  • ブランド:興奮  【対応】 ビッグ・ファイブ:外向性 
  • ブランド:能力  【対応】 ビッグ・ファイブ:誠実性 

 

 このように、ブランド・パーソナリティは私たちのパーソナリティとも密接に関係し、日々の購買行動やブランド選択の中に根付いているのです。 

 

 

著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

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