コラム

ニュールック心理学とは?

2023.9.21 心理
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ニュールック心理学とは、どのような分野なのでしょうか。 

 

心理学には様々な分野がありますが、その1つにニュールック心理学というものがあります。
ただし、このニュールック心理学は「学習心理学」や「発達心理学」などとは少し異なる分野区分となっています。
 

 

ニュールック心理学は1940年代後半に心理学において知覚が要求・欲求・期待・態度・経験・パーソナリティ・社会性に影響を及ぼすのではないかという仮説からスタートしています。
つまり、ニュールック心理学とは知覚心理学を中心として、そこに社会心理学やパーソナリティ心理学などの要素を組み込んだものということになります。
 

 

ニュールック心理学の代表的な専門家として、ジェローム・ブルーナー、ガードナー・マーフィー、ハインツ・ウェルナー、デイヴィッド・マクレランド、ハーマン・ウィトキン、ムザファー・シェリフ、イーゴン・ブルンスウィック、アルバート・キャントリルなどが挙げられます。
では、彼らの研究内容からニュールック心理学を紐解いていきたいと思います。
 

 

ジェローム・ブルーナーは最も代表的なニュールック心理学の専門家の1人です。ブルーナーは知覚と欲求や動機づけとの関連を研究し、認知過程に欲求が関与していること明らかにしました。
たとえば、裕福な子どもと貧しい子どもでは貨幣の大きさの知覚が異なっていることなどを実験の結果して明らかにしています。
つまり、これが「知覚に関する新しい心理学」であり、ニュールック心理学の誕生につながっていくわけです。
 

 

ガードナー・マーフィーはアメリカの心理学者であり、水路づけに関する研究があります。
水路づけとは欲求を満たす手段が複数あり、その複数の選択肢を全て利用可能な場合に、偶然、選択したある手段が欲求を満たした際、次回からはその選択肢と欲求が連結・固定化するようになるというものです。
マーフィは人間の趣味や習慣、価値観等が固定化するのは水路づけによるものであるとしています。
 

 

ハインツ・ウェルナーはオーストリア出身の発達心理学者であり、比較発達心理学の専門家として有名です。
ウェルナーは人間の誕生から精神疾患の発症、未開から文明への民族発生、動物の系統発生など多様な発達を研究対象とし、全ての生命体は未分化な状態から分化を経て統合へと進んでいくという定向進化を提唱しました。
その上で、知覚・思考・言語なども同じ定向進化の過程を経ていくと述べています。
 

 

デイヴィッド・マクレランドはアメリカの心理学者であり、動機づけを主に研究していました。
マクレランドは達成動機と社会の経済的繁栄に関する比較文化的考察から、資本主義の発展を社会の構成員の達成動機の強さの点から理論化しています。
 

 

ハーマン・ウィトキンはアメリカの心理学者であり、知覚・認知・学習・パーソナリティの関係を明らかにするための実験を行い「場依存型」と「場独立型」という認知スタイル(個人差の型)の研究を実施しています。 

 

ムザファー・シェリフはトルコ出身の社会心理学者であり「泥棒洞窟実験」を実施したことで有名です。
この実験は子どもを2つのグループに分けてキャンプ場で集団行動をさせるというものです。
この実験の結果、より上位の目標の設定・達成が集団間の葛藤を解消し、友好関係を形成するのに役立つことが判明しました。
 

 

イーゴン・ブルンスウィックはオーストリア出身の知覚心理学者であり、形や大きさの恒常性の研究から、人間は環境から与えられる近刺激の手がかりから、確率的に遠刺激についての知覚を達成するという確率論的機能主義を提唱しました。 

 

アルバート・キャントリルはアメリカの社会心理学者であり、マスコミや世論について主に研究しています。
有名なオーソン・ウェルズによる火星人襲来のラジオ放送によって多くの人々が実際にパニック状態になってしまったという事件から、マス・メディアの強力効果論を実証的に分析しています。
 

 

 

このように、ニュールック心理学は1つの「ブーム」として存在しつつ、その後は、最新の知覚心理学や社会心理学の研究へと発展していくきっかけとなったものとなっています。 

 

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この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

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