投稿が少し遅くなりましたが、心理学・カウンセリング・メンタルケアの専門家には、1月生まれの著名な先生方がいます。
ジョン・ワトソンは1879年1月9日生まれのアメリカの心理学者です。
ワトソンはファーマン大学で学んだ後、シカゴ大学に進学しました。
そして、1903年にシカゴ大学の歴史上、最初の心理学博士号の取得者となりました。
ワトソンは博士号取得の際の博士論文を共同で出版し、そのままシカゴ大学に助手として所属しました。
ワトソンはシカゴ大学の教授だったエンジェルの下で指導を受けました(ちなみに、エンジェルはジェームズ-ランゲ説で有名なジェームズの教え子であり、世界で最初の心理学実験室を開設したヴントの弟子でもあり、心理学の草創期を支えた有名な心理学者です)。
エンジェルの下で、ワトソンはラットやサルを使った心理学実験に従事しました。
そして、その後の学習心理学・行動分析学の基礎的研究となるハト(鳥類)を使った心理学実験をスタートさせました。
その中で、ワトソンは心理学の歴史の中でも一時期、主流となり、現在も研究が盛んな行動主義を提唱しました。
行動主義は、科学的心理学とは行動の科学であると定義するものであり、その研究対象は客観的測定の不可能な意識ではなく直接観察可能な行動であるとするものです。
これは、20世紀初頭における伝統的な精神分析を中心とする心理学の考え方に真っ向から反対するものでした。
ワトソンはロシアの生理学者であるイワン・パブロフが提唱した条件反射に関する理論説から強く影響を受け、意識や無意識などの観察不可能なものではなく、反射や行動などの観察可能なものを対象とすべきであるという考えに至ったわけです。
これは、当時、心理学以外の科学分野でも主流となっていた実証主義の流れとも合致するものであり、その後のアメリカにおける心理学の方向性を決定づけました。
より具体的にはワトソンは心理学の目的は行動の予測と制御であると述べ、物理的刺激と個体の全体的活動の関係について研究しました。
そして、頻度の法則と新近性の法則という刺激と反射(反応・行動)に関する法則を提唱しました。
ワトソンは1908年からジョンズ・ホプキンズ大学で実験および比較心理学の教授を務め、1913年に心理学の学術雑誌である「Psychological Review 」に行動主義的心理学の基本的なプランを発表しました。
その後もワトソンは動物だけではなく、子どもや大人の行動に関する学習について実験的研究を継続し、その成果をまとめたものを1920年に発表しています。
ワトソンの研究で最も有名なものは、アルバート坊やという名前の赤ちゃんを実験対象としたものでしょう。
この実験は生後11ヶ月のアルバートという赤ちゃんに対して、白いネズミを提示しつつ、アルバートの背後で鉄の棒を叩いて大きな音をたてるという実験を繰り返すものでした。
当初、アルバートは白ネズミに対して何の感情・態度も持っていませんでしたが、実験を繰り返す中で、大きな音の対提示によって、白ネズミに対する恐怖の感情を学習してしまいました。
さらに、学習心理学・行動分析学の概念である般化の影響により、アルバートは白ネズミだけではなく、それと似た見た目・肌ざわりのウサギや毛皮のコートなどにも恐怖を抱くようになりました。
この実験から、恐怖や不安などのネガティブな感情は、学習によって新たに獲得されることがあるということが判明しました。
アルバートは赤ちゃんでしたが、同様の学習過程は大人でも成立するものであり、それが限局性恐怖症や不安症などの精神疾患の発症メカニズムを説明するものとなっています。
このように、ワトソンが実施した徹底した客観主義・実証主義による心理学実験の成果は、現在の心理カウンセリングにも活かされているのです。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部 「つぶやきコラム」は、医療・福祉・心理学・メンタルケアの通信教育スクール「TERADA医療福祉カレッジ」が運営するメディアです。 医療・福祉・心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、調べたいことがある、学んでみたい人のために、学びを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。