労働と心理学にはどのような関係があるのでしょうか。
日本には365日の全てに何らかの「記念日」が制定されています。
3月1日は「労働組合法施行記念日」に制定されています。
これは1946年の3月1日に労働者の地位向上を図るための法律である「労働組合法」が施行されたことがきっかけとなっています。
労働組合法とは、労働基準法・労働関係調整法とともに労働三法の1つであり、労働者の団結権・団体交渉権・ストライキ権を保障するものとなっています。
日本では大正時代に労働組合は存在していたものの、雇用者と集団交渉する権利は保証されていませんでした。
そこで、終戦後、連合国軍総司令部(GHQ)が日本の労働者たちが労働組合を結成することを奨励し、1945年11月に労働組合法案が帝国議会に提出され、同年12月に可決・成立しました。
では、労働と心理学にはどのような関係があるのでしょうか。
私たちが日々、従事している労働については、主に産業・組織心理学において研究が実施されています。
産業・組織心理学とは、本来は「産業心理学」と「組織心理学」の2つの分野から構成されているものです。
産業心理学は、産業活動全般を対象とするものであり、そこで発生する様々な問題を心理学的な見地から検討するものです。
厳密な意味では産業心理学とは区別される分野として、組織心理学があります。第二次世界大戦後、技術のめざましい進歩は産業場面に革新をもたらしました。
しかし、その結果として、人間と道具・機械との不適合が問題となることも増えました。
そこで、1960年代後半から組織に働く人々の行動を個人と組織的環境との相互作用の中で説明しようとする組織心理学への関心が急速に高まりました。
関心の急速な高まりに合わせて、それまでの伝統的な産業心理学に対する批判も展開されました。
組織心理学とは、組織における人間行動について、個人とそれをとりまく組織環境との相互依存的関係のなかで理解することを目的とするものであり、それまでの産業心理学では、雇用や採用、配属における選抜や仕事に関する訓練、仕事の適性といった問題は、従業員個人を職務にどう当てはめるかという枠組のなかで考えられてきました。
しかし、こうした問題は、実は集団の特性や組織風土、組織構造といった個人をとりまく組織環境と密接に関わっているため、組織成員の行動は、組織と個人との相互作用の中で捉えていくことが必要であることが分かりました。
このような経緯で現在の産業・組織心理学が誕生しました。
そして、今の日本の産業場面において特に注目されているのは、ストレスチェックやプレゼンティーズムに関する問題です。
2015年12月から、従業員のストレスチェックが義務化されました。これにより、従業員数が50名を超える事業所では1年に1回のストレスチェックが実施されるようになりました。
そもそも、ストレスチェックとは、改正労働安全法に基づいて企業・事業所が主体となって、従業員のメンタルヘルス対策を実施するということを目的としているものです。
ここでいう事業所とは、学校などの教育機関、病院などの医療機関、市役所などの公共機関なども幅広く含むものであり、一般的な企業だけではなく、非常に多くの組織が該当するものとなっています。
そして、ストレスチェックとも関連する重要なキーワードとして、プレゼンティーズムがあります。
プレゼンティーズム(Presenteeism)とは「疾病勤務」とも訳されることがあり、出勤しているものの、パフォーマンスが低下している状態を指します。一方で、アブセンティーズム(Absenteeism)というものもあります。
アブセンティーズム(Absenteeism)とは、仕事を休業している状態のことを指します(absent = 欠席・欠勤という意味で捉えると分かり易いと思います)。
一見すると「休業 = パフォーマンスが“ゼロ”」の方が大きな損失につながりそうに思えます。
しかし、大規模な調査研究の結果、プレゼンティーズムにおける経済的損失が非常に大きいことが報告されています。
つまり、休業することで起きる業務上の損失よりも、心身の不調を抱えながら勤務していることによる“パフォーマンスの悪さ”・“効率の悪さ”の方が、損失が大きいということです。
このように、現在の日本では、ストレスチェックやプレゼンティーズムが重要な課題として存在しており、産業・組織心理学で研究が進められているのです。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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