レンシス・リッカートは8月生まれの著名な精神医学の専門家です。
心理学・カウンセリング・メンタルケアの専門家には、8月生まれの著名な先生方がいます。レンシス・リッカートは1903年8月5日生まれのアメリカの社会心理学者・産業・組織心理学者です。リッカートはその名が冠されたリッカート法とよばれる、現在では世界基準となっている心理学の調査法を確立したことは有名です。
リッカートは1932年にアメリカのコロンビア大学で博士号の学位を取得した後、ニューヨーク大学で心理学者としてのキャリアをスタートさせています。そして、1946年にはミシガン大学の教授となり、同大学に社会調査センターを創設しました。リッカートはこの社会調査センサーの所長も務めています。その2年後に社会調査センターは心理学者のクルト・レヴィンが設立したマサチューセッツ工科大学の集団力学研究センターと併合して社会調査研究所に改組されています。リッカートはその後も引き続き、社会調査研究所の所長を1970年にミシガン大学を退官するまで務めています。リッカートやレヴィンらの心理学者が社会心理学や産業・組織心理学などの集団・組織に関する心理学的研究を大々的に進めていたことから、ミシガン大学を中心とした「ミシガン学派」とよばれる研究者グループが誕生しました。その中心にあったのがミシガン大学の社会調査研究所となっていました。
定年退官後のリッカートは自身の名を冠したレンシス・リッカート研究所を開設し、アメリカ統計協会会長・アメリカ心理学会理事・国際応用心理学会委員なども歴任しています。
リッカートが開発したリッカート法は社会心理学の研究テーマである態度の研究において、態度を質問紙形式の方法で、現在では心理学的な態度研究の伝統的な手法の1つとなっています。また、現在では態度測定だけでなく、あらゆる心理学的な測定・評価の代表的な手法となっています。
リッカート法は別名、評定加算法ともよばれるものであり、個人の持つ「好き – 嫌い」や「当てはまる – 当てはまらない」「そう思う(賛成) – そう思わない(反対)」などの一次元の連続した評価対象に関する態度がどういったものなのかを具体的な数値で示すことができます。より具体的には、測定したい対象(態度や感情など)に関する複数の質問項目を設定し、5件法(非常によく当てはまる・当てはまる・どちらでもない・当てはまらない・全く当てはまらない 等)で評定させます。この際「5. 非常によく当てはまる・4. 当てはまる・3. どちらでもない・2. 当てはまらない・1. 全く当てはまらない」のように、それぞれの選択肢に数値を割り振ります。そして、別名である評定加算法の名が示す通り、各質問紙の評定選択肢の数値を合計(平均)することで、態度・感情などを数値化することができます。
リッカート法の基本的な考え方として、複数の質問項目への回答が評価的に一次元性をもっていると仮定すると、合計(平均)を算出することで、測定対象への評価以外の誤差が打ち消し合うことになります。そのため、回答した個人の評価の連続体上における測定対象への評価の相対的な位置をより正確に推定することができるはずであるという数学的・統計学的な根拠に基づいています。リッカート法はこのように数学的・統計学的な基準に従って開発されているため、新たに作成した質問紙や心理検査が統計分析における主成分分析などによって分析をした結果、評価の一次元性が担保されていないことが判明した場合、その質問紙は構造的な問題を抱えているということが分かるようになっています。つまり、リッカート法は質問紙・心理検査の構成という意味だけでなく、質問紙・心理検査が「問題なく使用できるものなのか?」という信頼性や妥当性についても明らかにすることができるという特性を持っています。
このように、リッカートが開発したリッカート法は心理学において重要な位置を占めており、それはネガティブな感情やパーソナリティ、発達、精神疾患の重症度など測定・評価という観点から、臨床心理学や心理カウンセリング、メンタルヘルスの分野においても広く活用されているのです。
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