カール・メニンガーは1893年7月22日生まれのアメリカの精神科医・精神分析家です。
メニンガーはウォッシュバーン大学、ウィスコンシン大学を経て、ハーバード大学の医学部を卒業します。
そして、インターン実習の際に精神医学に関心を抱き、精神医学の研究に従事します。
その後、1925年に父や弟とともにメニンガー・クリニックを創設します。
これは、メニンガーの家族が医者をしていたため、家族経営でクリニックをスタートさせたということです。
当初、メニンガー・クリニックは現在における精神科・心療内科としての位置づけでしたが、1930年代にはクリニックを拠点として、精神科医や心理学者・心理専門職などに向けた教育プログラムのトレーニングを開始しました。
そして、精神医学に関する研究・教育・カウンセリングをさらに広げていくために、1941年には、クリニックを中心としたメニンガー財団を設立しました。
その後、1946年にはメニンガー医学校を設立しました。
これは戦争に従軍後、帰国した元兵士の治療・支援のために精神科医を養成することが国家レベルで急務となっていたことが背景にあります。
そのため、メニンガー医学校は急速にアメリカ随一の精神科医養成施設へと成長していきました。
メニンガー・クリニックおよびメニンガー財団は、アメリカで大規模な精神医学の研究機関・教育機関として、隆盛を極めていた時期が長くありました。
そのため、海外からも多くの専門家が留学しています。
日本人の専門家も留学しており、なかでも有名なのが土居健郎です。
土居は精神科医・精神分析家であり、後に東京大学名誉教授や聖路加国際病院診療顧問を歴任しています。
土居は精神分析の当時の最先端をメニンガー・クリニックで学び、帰国後に、日本人の精神構造に関する理論を展開しました。
これは、精神分析的なパーソナリティ論であると同時に、文化人類学的・社会学的な観点から「日本人のこころ」というものを研究しています。
土居は日本人の精神構造の根底には「甘え」という鍵概念あると考えました。
一般的に「甘え」とは、人の親切・好意を遠慮なく受け入れること、という辞書的な意味で用いられることが多いです。
そして、土居が理論化した「甘え」も基本的には一般的・辞書的な意味と同じですが「他者に愛され、他者の庇護のもとに自由に振る舞いたいという欲求や感情」というニュアンスが含まれています。
土居は「甘え」は主に母親などの養育者から分離したはずの乳児が、なおも母親(養育者)に依存したがる傾向であると定義しています。
母親(養育者)との心のつながりを形成するために必須の要素であり、健康な精神発達には欠かせないものであるとされています。
しかし、日本では成人後も甘えが他者への依存願望として一般化される傾向が強く、この願望が充足されなければ恨みやひがみが生じやすくなると考えられます。
この状態がさらに悪化すると、精神疾患の原因にもなるとされ、たとえば、森田療法における概念である森田神経質の「とらわれ」は、甘えたくても甘えられない状況下で生じると考えられています。
また、対人恐怖は、特に人みしりの強い人が甘えられない状況で生じるとされており、心理臨床的にも大きな意味があります。
土居は甘えに関する理論を『「甘え」の構造』という著書にまとめました。
これは、精神医学・精神分析学に関する書籍としても有名ですが、日本人の精神構造を解き明かした代表的な日本人論の名著でもあり、英語・ドイツ語・フランス語・イタリア語・中国語・韓国語・インドネシア語・タイ語など多くの翻訳書が出版されています。
メニンガーおよび土居が専門としていた精神分析・精神分析療法については、こころ検定2級(メンタルケア心理士)のテキストである、カウンセリング基本技法の第6章でも概観しています。
ご興味・ご関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部 「つぶやきコラム」は、医療・福祉・心理学・メンタルケアの通信教育スクール「TERADA医療福祉カレッジ」が運営するメディアです。 医療・福祉・心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、調べたいことがある、学んでみたい人のために、学びを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。