インターネットは社会心理学や認知心理学などの観点から研究が進められています。
これらを総称して、インターネット心理学という分野が確立されています。
私たち人間はこれまでにコミュニケーションのための道具をたくさん開発してきました。
インターネットもそのうちの1つです。
インターネットは、アメリカの国防総省が1960年代にコンピュータによるネットワーク開発に着手したことが発端となって発展・普及していったとされています。
当初はインターネットという名称でさえなく、アルパネットとよばれていました。
国防総省が開発した目的は人間同士のコミュニケーションのためではなく、単にデータを共有するためだけのものでした。
しかし、電子メールが早い段階で開発されたことで、コンピュータを使用した人と人とのコミュニケーションが実現するに至りました。
日本において、インターネットが一般的に普及し始めたのは1995年前後であるとされています。
総務省の調査報告によると、2006年時点でのインターネットの人口普及率は68.5%であり、2014年時点での人口普及率は82.8%という非常に高い普及率となっています。
現在では、日本を含む世界中で、いわゆる“パソコン”からスマートフォンなどのデジタル・デバイスへと移行しているため、さらにインターネットの普及率は高まると考えられています。
インターネットが一般に普及したことで、コミュニケーション・ツールとしてのインターネットについて心理学的な観点から研究が進められてきました。
対面のことをFtF(Face-to-Face)と表現しますが、パソコンやインターネットによるコミュニケーションはCMC(Computer-Mediated Communication)、“コンピュータを媒介したコミュニケーション”とよばれています。
研究の結果、CMCには、視覚的匿名性・社会的手がかりの減少・自己意識への影響・自己開示の促進・フレーミング・集団極性化・コミュニケーションの男女差・実生活の対人関係への影響などの特徴があり、これらの観点から心理学的な研究が実施されています。
インターネットによるコミュニケーションは単に便利なだけではなく、メリットもデメリットもあり、なおかつ、通常の対面によるコミュニケーションとは異なる心理的過程があるわけです。
また、臨床心理学的な観点からは、インターネット依存に関する実践報告や研究があります。
インターネットに関する身体的・精神的な問題を総称する概念として、インターネット依存症というものがあります。
ただし、最新の精神疾患の診断マニュアルであるDSM-5には“インターネット依存症”という項目は存在せず、精神医学的な見地に基づいた正式な診断基準も確立されてはいない状態です。
しかし、WHO(世界保健機関)を中心に、インターネットへの依存・中毒を精神的な疾患として捉え、診断基準を確立させるための動きが活発化してきています。
インターネットに関する科学的な研究は、心理学だけではなく、社会学、教育学、情報科学などの多岐にわたる分野で実施されています。
しかし、これらの研究の多くはインターネットが普及し始めた1990年代後半から2000年代初頭に実施されており、当時の技術や社会情勢の影響が大きく、現在の状況にそのまま当てはめることが困難であると考えられます。
1990年代後半から2000年代初頭に自分自身がインターネットというものをどの程度理解し、どのくらいの頻度で利用し、具体的に何をしていたのかを振り返ってみると、現在の状況とは大きく異なるという人も多いのではないでしょうか。
また、今では使いこなせているし、むしろインターネットの無い生活など想像もつかないという人も、1990年代後半から2000年代初頭にはインターネットはおろか、パソコンすら持っていなかったということもあるのではないでしょうか。
従って、インターネットが十分に普及し、日常生活になくてはならないものになった現在において、インターネット利用がどのような認知・感情・行動を人間に引き起こすのかを改めて検証する必要があると考えられます。
インターネット心理学については、こころ検定2級(メンタルケア心理士)の合格後に学ぶことができる「メールカウンセリング講座」で概観していますので、ご興味・ご関心がある方は、是非、勉強してみていただければと思います。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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