心理学・カウンセリング・メンタルケアの専門家には、4月生まれの著名な先生方がいます。
1908年4月1日生まれのアブラハム・マズローはアメリカの心理学者です。
マズローはウィスコンシン大学で博士号を取得しました。
マズローを研究指導したのは、アカゲザルを使った愛着の形成に関する実験で有名なハリー・ハーローでした。
当初、マズローは学習心理学・行動分析学などの行動主義による心理学的研究に従事していましたが、やがて研究の方向性を広げ、人間の動機づけや欲求に関する研究を開始しました。
この研究の過程で確立されたのがマズローの欲求段階説(欲求階層説や動機の階層説ともよばれます)です。
マズローは人間の欲求を以下の5段階に分けました。
生理的欲求が充足されることで安全に対する欲求が発生し、安全に対する欲求が充足すると、所属に対する欲求が発生するというように、下層の段階の欲求が満たされることで、次の段階の欲求が発生するというものです。
また、人間は誰しも最終的な欲求として自己実現を達成することを目標として活動していると定義しています。
マズローは欲求段階説において最も高次な欲求である自己実現を重視し、心理学において人間の主観的な経験を重視する人間性心理学の創始者の一人となりました。
人間性心理学は、フロイトによる精神分析、スキナーによる行動分析に次ぐ第三の心理学の潮流です。
フロイトが人間の無意識に注目し、スキナーが人間の行動・反応に注目して人間を理解しようとしたのと同様に、マズローは人間の主観的経験や欲求・動機づけに注目し、人間を理解しようとしました。
1960年代~1970年代にアメリカなどで起きていた人間性回復運動の流行に乗り、マズローの理論は当時、多くの人々に受け入れられることになりました。また、マズローは1967年にアメリカ心理学会の会長に選出されています。
エドワード・トールマンは1886年4月14日生まれのアメリカの心理学者です。
トールマンは当初、ドイツの心理学者で現在の産業・組織心理学の基礎を築いたヒューゴ・ミュンスターバーグの下で研究に従事して、博士号を取得しました。
その後、トールマンは学習心理学・行動分析学などの行動主義の方向へと研究をシフトしていきました。
トールマンが研究に従事しはじめたころ、人間は刺激と反応の連合によって活動しており、心理学は目に見えない感情やパーソナリティ(性格)などではなく、目で見て確認できる外的な刺激や行動のみを測定対象とするべきであるという徹底的行動主義の風潮が強くありました。
しかし、徹底的行動主義における刺激と反応の関係性だけでは説明が難しい現象も多く存在することが判明しはじめました。
そこで、トールマンは刺激と反応の間に認知的な要素を取り入れることで、人間や動物の様々な活動について研究を進めていきました。
トールマンをはじめとする何人かの心理学者が、このように行動主義的な考えの中に認知的な要素を組み込んだことで、行動主義的な心理学は新たな展開を迎えることとなり、新行動主義とよばれる新たな潮流が誕生しました。
トールマンは特に「目的」という概念を重視した目的的行動主義を提唱しています。
目的的行動主義とは、人間や動物はただ刺激と反応の関連性から活動しているだけではなく、何らかの目的・目標があり、その目的・目標へ向けて活動しているというものです。
従って、目的・目標が達成される前と達成された後では、同じ外的状況(刺激)があったとしても、人間や動物の行動・反応は変化するということです。
トールマンはネズミを使った実験によって、認知地図という理論を提唱しており、その後の認知心理学の発展にも寄与しています。
また、トールマンは1937年に功績が評価されてアメリカ心理学会の会長に選出されています。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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