心理療法の一種に芸術療法というものがあります。
これは様々な芸術作品を創造する活動に従事することを通じて、心身の健康を回復することを目的とするカウンセリング手法です。
芸術療法のほとんどは、心理臨床の実践の中で、その治療・支援の効果を専門家が経験的に評価し、テクニックを発展させてきたものとなっています。
芸術療法の代表的なものに、療法・音楽療法・詩歌療法(俳句・短歌・詩などの文学創造)・箱庭療法・陶芸療法(焼き物などの作成)・コラージュ療法(貼り絵)・舞踏療法(音楽にあわせて身体を動かす)など、実に様々なものがあります。
特に代表的かつ実施されることが多いのは、絵画療法・音楽療法・箱庭療法です。
絵画療法はクライエントが描いた絵を解釈する点では共通していますが、描き方の指定や自由度、解釈の背景となる理論の違いにより様々な技法があります。
精神医学的診断のための技法として解釈の手続の標準化が進んでいるものも多くあります。
また、診断だけでなく、治療的介入へのきっかけとしての利用を考慮した系統的な手続による客観的な評価に頼らない解釈的な傾向の強いものもあります。
個人に対して行うのが一般的ですが、集団で施行する場合もあります。
日本で開発された絵画療法もあり、これは風景構成法が有名です。
風景構成法はクライエントに真っ白な画用紙に枠を描かせ、川・山・家・木・動物などを自由に描かせ、彩色もさせるというものです。
音楽療法とは、音楽がもつさまざまな効果を心身の健康回復・治療に利用する療法の総称です。
音楽を健康のために利用するという発想は古くから、様々な文化において広く認められるが、実証科学的な研究の歴史は比較的浅いという問題もあります。
治療の対象と音楽のどのような効果を利用するかという観点から、神経症や心身症の患者に心身のリラクセーションを促進するために音楽を用いる、発達障害や情緒障害児に対し音楽を楽しむことによるカタルシス効果などを生かす遊戯療法的利用、身体機能の回復をめざすリハビリテーション領域での利用、精神障害者に対する心理療法的利用、老人施設などで交流促進や心身機能増進のためのレクリエーション療法的利用などがあります。
箱庭療法はローエンフェルドが開発した世界技法を、カルフがユングの精神分析的な理論をベースにして発展させたものです。
砂の入った木箱と様々なミニチュアが用意され、クライエントは砂の上に自由にミニチュアを並べ、また砂で山を作るなどのイメージ表現を行います。
遊び的な要素と構成的な要素があるため、子どもにも大人にも適用されます。
普通は子どもの遊戯療法の中で適宜用いられ、大人の場合は言語的なやりとりに行きづまった際に導入します。
注意点として、クライエントの内的イメージを深くゆさぶってしまう可能性があり、自我の統制力の弱い精神病性の症状を示すクライエントについては実施に危険が伴う可能性があるとされています。
芸術療法における芸術活動が心身の健康の回復・維持に効果を持つ背景には、以下のようなものが挙げられます。
1.言語的・論理的にではなく、イメージによって自己の内面を表現することにより内的葛藤が解放されることによるカタルシス効果が得られること
2.芸術作品が投影法的な心理検査(アセスメント)としての働きをもつことにより、無意識が明らかになり、治療の手がかりが得られること
3.芸術の創造活動がリハビリテーションとして効果を発揮することで、機能不全を起こしていた心身の機能が回復すること
上記3つが芸術療法の特徴であり、メリットでもあります。
他の心理療法にはない要素があるため、心理臨床の現場で活かされています。
芸術療法は様々な効果が相乗的に機能して心身の健康状態の改善をもたらしていると考えられます。
しかし、具体的にどの効果がどのような変数によって、どれだけの影響を生んでいるのかという点について、明確になってはいないという問題もあります。
芸術療法の一種である箱庭療法について、こころ検定1級のテキストである、カウンセリング技法の第16章で概観しています。
ご興味・ご関心がある方は、是非、勉強してみていただければと思います。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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