コラム

8月生まれの心理学・カウンセリング・メンタルへルスの専門家 Part3

2019.8.22 心理
  • うつ病
  • 学習心理学

心理学・カウンセリング・メンタルケアの専門家には、8月生まれの著名な先生方がいます。
マーティン・セリグマンは学習性無力感に関する研究で有名です。

 

 

▶マーティン・セリグマン

マーティン・セリグマンは1942年8月12日生まれのアメリカ・ニューヨーク出身の心理学者です。

 

1964年にプリンストン大学で哲学の学位を取得後、1967年にペンシルバニア大学で心理学の博士号を取得しています。

 

その後、コーネル大学で教鞭をとり、1970年に母校であるペンシルバニア大学へと戻り、1976年から心理学部門の教授を務めます。

 

また、1998年にアメリカ心理学会(APA)の会長も務めています。

 

セリグマンが行った研究として重要なのが、1970年代に実施した学習性無力感についての研究です。

 

学習性無力感とは、客観的非随伴が非随伴知覚を導き、別の新たな状況に対しても不適切な一般化を生じて無力感が形成されるというものです。

 

これは、強制的・不可避的な不快経験やその繰り返しの結果として、何をしても環境に対して影響を及ぼすことができないという誤った全般的ネガティブな感覚が生じることで、問題・課題の改善・解決への試みが放棄されてしまい「あきらめ」が支配する状態になるということです。

 

セリグマンは制御不能の電気ショックを与えられ続けた犬が、別の制御可能な状況において、自ら電気ショックから逃れようとせず、うずくまったままであったことについて、電気ショックが逃避不能であり自分の行動が無力であることを学習してしまったという実験結果を導き出しました。

 

このような学習性無力感の強化・獲得は動物にとって食欲・性欲の減退に加え、潰瘍の形成や体重の減少、脳内の神経伝達物質の変化など、生理的過程への波及を含む幅広く深い影響を生じさせるものであることが明らかになりました。

 

そして、この学習性無力感は、人間にも発生するものであり、それは抑うつの形成メカニズムとして捉えることができると考えられています。

 

抑うつ状態にある人は、身近な人物の喪失や仕事の失敗、重い病気等に直面して、自分が無力であると知覚してしまいます。

 

これは、実験における犬と共通するものであり、行為と不幸な結果の間の知覚される随伴性の欠如によるものであると考えられます。

 

そのため、学習性無力感はうつ病の発症メカニズムを説明する理論の1つでもあるのです。

 

学習性無力感の考え方は様々な場面で適用されています。

 

ドゥエックは教育の領域に学習性無力感の問題を適用し、学業不振対策の一環として、帰属変更プログラムの導入を実施しています。

 

これは、学業不振児は往々にして学業での失敗を自らの能力の欠如に原因づけることにより無力感を生じさせているという考えに基づき、彼らに努力不足による失敗であったと誘導的に帰属変更させることにより、無力感の解消と達成への努力を触発させようとするというものです。

 

また、アブラムソンらは、学習性無力感は自分は他人より劣っているという自己不信につながる「個人的無力感」と、自他を含めた反応の全てが望ましい結果と関連しないと考える「普遍的無力感」から構成されていると考え、小学生の終わりから中学生にかけて、これら両方を含んだ一般的学習性無力感の形成が認められるとされています。

 

セリグマン学習心理学(行動分析学)の観点から、学習性無力感の研究に端を発し、うつ病に関する研究にも従事していました。

 

しかし、自身の娘の事故を機に、無力感やうつ病などのネガティブな側面よりも、ポジティブな側面に関心を向けるようになります。

 

それが、ポジティブ心理学についての研究をスタートさせるきっかけとなり、セリグマンはポジティブ心理学の創設者の1人となります。

セリグマンはペンシルベニア大学にポジティブ心理学センターを創設し、そのセンター長を務めています。

 

学習性無力感については、こころ検定1級(メンタルケア心理専門士)のテキストであるカウンセリング技法の第4章で概観していますので、興味・関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。

 

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この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

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