脳の右側と左側では、得意とする事柄が異なるというものがあります。
では、心理学的に観点から、左脳と右脳にはどのような違いがあるのでしょうか。
脳には左脳と右脳というように、右と左を分けて考える場合があります。
心理学の分野でも、生理心理学において、脳や神経の研究が実施されており、左脳と右脳の違いについても検証されています。
研究の結果、脳にはそれぞれ“得意分野”があることが判明しています。
たとえば、言葉に関する能力(言語能力)は左脳の方が得意であることが分かっています。
逆に右脳の方は、自分の位置から目で見たものまで距離を正確に把握するなどの能力(空間把握能力)や歌を歌ったり、楽器を演奏する能力(音楽的能力)、感情を司る能力が得意であるとされています。
現在はMRIなどの精密機械を使うことで、脳の構造や機能が明確になってきていますが、最初の研究では、病気やケガで脳の一部に損傷を負った人の治療・支援をする中で、様々なことが判明していったという経緯があります。
たとえば、左脳と右脳をつなぐ脳梁という部分に損傷を負った人に関する「分離脳の実験」があります。
まず、人間は右目で見たものは左脳に、左目で見たものは右脳にそれぞれ情報として送られて処理されます。
その上で、脳梁で左脳で受け取った情報と右脳で受け取った情報を組み合わせることで、はじめて目で見たものを正確に理解することができるわけです。
同様に左手の感触は右脳に、右手の感触は左脳に送られて処理されるようになっています。
しかし、脳梁に損傷を負っており、左脳と右脳が直接つながっていない状態になると、左脳と右脳で情報交換をすることができません。
そのため、非常に不思議な現象が起きることが判明しており、それを検証したのが分離脳の実験なのです。
分離脳の実験は以下のような手順で実施されます。
1. デスクの上に様々な工具を置き、そのデスクの前に大きなスクリーンをセッティングする。
スクリーンは左右で2つに分かれており、左半分は左目、右半分は右目でしか見ることができない。
2. 脳梁を損傷している人にスクリーンの前に座ってもらう。
スクリーンの向こう側は見えないが、手を伸ばすとデスクの上にある工具に触れることができる。
3. スクリーンの左半分に「ナットを取ってください」と表示される。
この文章は左目でしか見ることができない。左目で見た文章は右脳に送られる。
4. 右脳は空間的能力・音楽的能力・感情は得意だが、言語能力は得意ではないので、見た文章の指示通りに手を動かしてナットを掴むことはできるが「あなたが今、掴んでいるものはなんですか?」と質問されても「分かりません」としか答えられない。
5. 左目で見た指示に基づいて左手を動かすことはできるが、それらの情報は右脳に送られても、脳梁が損傷を負っていると言語能力が得意な左脳に情報を送ることができない。
そのため、身体を動かして正確に指示通りに行動できても、それを言葉で説明できない。
6. 逆にスクリーンの右半分に「ナットを取ってください」と表示される。
この文章は右目でしか見ることができない。右目で見た文章は左脳に送られる。
7. 左脳は言語能力が得意であるため、デスクの上のナットを掴み「あなたが今、掴んでいるものはなんですか?」と質問されたら「ナットです」と正しい解答ができる。
8. 右目で見た指示に基づいて手を動かし、その情報は左脳に送られる。
脳梁が損傷を負っているものの、目で見た文章と手で掴んだ物に関する情報は言語能力が得意な左脳に送られているので、自分のやっていることをちゃんと言葉で説明することができる。
健康な状態であれば、自然にできてしまうことも、脳の一部が正常に機能していないだけで、このような不思議なことが起きてしまうのです。
分離脳の実験からも分かるように、脳は左と右で得意とする能力が異なります。
しかし、これはあくまで“得意”・“優位”というだけであって、“何らかの能力が全く無い”ということではありません。
重要なのは脳梁が左右を繋ぎ、情報を共有することで、正確な知覚・認知が瞬時に可能となっているということです。
脳と心理学の関係については、こころ検定4級の第3章で概観していますので、興味・関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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