いわゆる、ミーティングや会議、採用面接の一環であるグループ・ディスカッションなどにおいて、ブレーン・ストーミングという手法が使われることが多いです。
これは、アメリカの心理学者であるアレックス・オズボーンが考案した発想法です。
ブレーン・ストーミングは既存の考え方に囚われない思考・発想によってオリジナリティ溢れる独創的なアイディアを生み出すために、集団意思決定の方向性をコントロールすることで創造的思考を活性化させる手法なのです。
創造的思考とは、生産的思考とほとんど同じ意味で使われる用語ですが、創造的思考は生み出されるアイディアが新たな手段に留まらず、その所産全体にまで言及するという違いがあります。
ブレーン・ストーミングは既存の構文的構造から一時的に解放されることで、思いつく限りのアイディアを出していくという流れが創造性を高めるきっかけとなるとされています。
ブレーン・ストーミングでは、議長の役割(司会進行)を担う人と10人前後のメンバーが会議形式で実施します。まず、議長役は参加者に次の基本原則の呈示を行うところからスタートします。
1.他人のアイディアについて評価・批判しない
2.自由奔放なアイディアを尊重する
3.アイディアの量を求める
4.他人のアイディアの結合と改善をする
1.の「評価・批判をしない」というのは、他者の意見をけなしたりはしないのも当然ですが、逆に褒めることもしないということを意味しています。
また、3.はクオリティの高いアイディアを求めるよりも、とにかくアイディアの数が多ければ多いほど良い、というものです。
4.は自分の意見を主張することが重要ではないという意味が含まれます。
一般的には、自分自身で考えた独創的なアイディアを出すことが重要視されることが多いですが、他者の出したアイディアに「後乗り」することが推奨されるのがブレーン・ストーミングなのです。
たとえば、Aというメンバーが何らかのアイディアを出したとします。
その直後に、別のBというメンバーが「Aさんの意見に賛成です。ただ、この部分にもっと注目して、〇〇という方向性に展開していくというのは、どうでしょうか?」というように、他者の意見に乗っかって、それを発展させた意見を「自分の意見」として主張することが許されているわけです。
この際、オリジナルの意見を出したAが評価されるかというと、特にそういう評価基準があるわけではなく、あくまで集団意思決定の過程で、できるだけ沢山のアイディアを生み出すことが最重要視されるわけです。
議長役によって、前述の1~4の原則が呈示された後、まず1人のメンバーがアイディアを発表します。
次に別のメンバーが新たなアイディアを発案するか、もしくは最初のメンバーが呈示したアイディアを発展させたり、ということを数十分程度、繰り返し続けます。
気をつけなければいけないのは、ブレーン・ストーミングの主眼はあくまでも沢山のアイディアを生み出すことであり、みんなで話し合って最終的に発想をまとめて、1つの意見に絞り込むことが目的ではありません。
ブレーン・ストーミングは当初は画期的な手法として注目を集めていましたが、現在では、あまり効果的な手法ではないとされています。
社会心理学における実験によって、集団の人数を同数にした上で、ブレーン・ストーミングによるミーティングと、普通に意見を出し合うミーティングで、アイディアの生産性の比較をしたところ、算出されるアイディアの量的な意味でも、質的な意味でも、ブレーン・ストーミングに優位性は必ずしも認められていないということが判明していしまったのです。
特に問題となるのは「量」の部分です。
ブレーン・ストーミングの最大の特徴は「沢山のアイディアを生み出す」という部分にあるにもかかわらず、そこにすら優位性がないということになると、より効果的な方法に注目が移ってしまっているのが現状です。
ブレーン・ストーミングのような集団に関する心理学については、こころ検定1級(メンタルケア心理専門士)のテキストである精神予防政策学の第1章で概観していますので、興味・関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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