シネマトグラフの日と心理学には、どのような関係があるのでしょうか
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日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。12月28日は「シネマトグラフの日」に制定されています。これは、1895年の12月28日にフランスのパリでリュミエール兄弟が発明した世界初の映画であるシネマトグラフが初の有料公開を実施したことがきっかけとなっています。当時上映されたのは「工場の出口」や「馬芸」、「金魚採り」などの10作品であったとされています。このシネマトグラフとは、発明家であるエジソンが開発したキネトスコープを改良したものでした。エジソンが発明したキネトスコープは1人で映像を見るという構造のものでした。リュミエール兄弟が改良したことにより、映像をスクリーンに投影することができるようになり、一度に多くの人が鑑賞できるものとなったのです。従って、世界で最初の映像メディアという観点では、エジソンが最初に発明したことになりますが、世界で最初の映画(映画館)という観点では、リュミエール兄弟の発明が該当すると考えることができます。
では、映画と心理学には、どのような関係があるのでしょうか。
映像と心理学の関係について、比較的な有名なものにクレショフ効果とよばれるものがあります。クレショフ効果とは、旧ソビエト(ロシア)の映画作家・映画理論家のレフ・クレショフが実験の結果明らかにしたものです。この実験は1922年に全ロシア映画大学の学内で実施されました。クレショフ効果とは、1つの映像が映画的にモンタージュ(編集)されることによって、その前後に位置する他の映像の意味に対して及ぼす影響のことを指します。クレショフは以下のような手順で実験を実施することで、映像が人間の心理に及ぼす影響について検討しました。
まず、実験1として、実験参加者に俳優の無表情なクローズアップの映像カットを見せ、その後にスープ皿のクローズアップの映像を見せます。そして、再び、俳優の無表情なクローズアップの映像カットを見せます。最後に、実験参加者に無表情な顔にどのような意味があると感じたかを回答させます。
続いて、実験2として、まず、実験参加者に俳優の無表情なクローズアップの映像カットを見せます。次に棺の中の遺体のクローズアップ映像を見せます。そして、再び、実験参加者に俳優の無表情なクローズアップの映像カットを見せます。最後に俳優の無表情な顔にどのような意味があると感じたかを回答してもらいます。
さらに、実験3では、実験参加者に俳優の無表情なクローズアップの映像カットを見せます。続いて、ソファに横たわる女性のクローズアップ映像を見せます。そして、再び、実験参加者に俳優の無表情なクローズアップの映像カットを見せます。最後に俳優の無表情な顔にどのような意味があると感じたかを回答してもらいます。
実験1、2、3の違いは「3つの連続したカットのうち、2つ目のカットが異なる」という部分のみで、その前後の俳優の無表情の映像カットは全く同じものです。しかし、実験1では、参加者は俳優の無表情な顔に対して「空腹」という意味を感じたと回答しました。実験2では、俳優の無表情な顔に対して「悲しみ」という意味を感じたと回答しました。実験3では、俳優の無表情な顔に対して「欲望」という意味を感じたと回答しました。つまり、全く同じ表情であっても「間に挟まる映像」が違うだけで、映像から受ける印象が変わってしまうということです。さらに、実験で使用した映像には音声もなく、字幕による説明もありません。また、本当の映画のようにストーリーもない非常に短いものなので、情報量は非常に少なく、無表情の顔に対するイメージの手掛かりとなるものはほとんど存在しないわけです。しかし、私たちは単純な映像からも「意味」を見出し、自身の解釈や感情をそこに乗せていくことになるのです。
私たちが何かを見たり聞いたりすることは専門的には知覚とよばれ、知覚心理学という分野で研究が実施されています。直接、映像や映画に関する心理学的な知識ではありませんが、こころ検定4級の第4章で、知覚心理学について概観していますので、興味・関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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