コラム

心理学におけるコーチングとは?

2022.7.28
  • 社会心理学
  • こころ検定1級

コーチングとカウンセリングは似ているようにも思えますが、では、心理学的にコーチングとは、どのようなものなのでしょうか。 

 

心理学において、まずコーチとは「ある目的に向かって教え導く人のこと」と定義されており、教える人や指導者などを総称する言葉として使われています。
基本的には運動やスポーツにおいて“コーチ”という言葉がよく使われており、特にテニスやサッカー、野球などでよく耳にするかと思います。
そして、「ある目的に向かって教え導くという行為」を総称してコーチングとよびます。
また、コーチングには似たような用語がいくつかあるので、それを整理整頓することで、より明確にコーチングについて分かるかと思います。
 

 

(1)コーチング 

コーチとよばれる専門家からアドバイスを受けながら、一緒に目標達成を目指すものです。
コーチはスポーツにおいても“プレイヤーではない人”という位置づけなので、野球やサッカーなどにおいて、コーチがチームに加わって一緒にプレイすることはありません。
従って、課題やプロジェクトに関しても、一緒に作業や仕事をするのではなく、あくまで“外側”からサポートやアドバイスをするのがコーチングです。
 

 

(2)ティーチング 

 ティーチングは単純に「何らかの物事・事柄について知っている人が、それについて知らない人に対して教えること」という位置づけになります。
学校の先生が生徒に授業をするのはティーチングに該当します。
コーチングとの違いは、一緒に目標達成を目指しているわけではない、ということです。
なので、ティーチングはカリキュラムに沿って、必要事項を教えることがメインとなります。
 

 

(3)カウンセリング 

 カウンセリングは病気・悩みなどに関して、カウンセラーが相談・支援をすることを意味しています。
コーチングとの一番の違いは“アドバイスの量”です。
コーチングにおいて、アドバイスをしないということはほぼないといってよいでしょう。しかし、カウンセリングは基本的にアドバイスが重視されるものではなく、クライエントの抱える問題への気づきを促すための傾聴に徹する段階があります。
 

 

日本では1950年代から1990年代において「スポーツ = コーチ・コーチング」という考え方がメインでしたが、1990年代後半から2000年代初頭にかけて、ビジネス分野にコーチングという考え方浸透しはじめました。
ビジネス場面におけるコーチングは、主に部下を持つ上司の立場にある人、管理職、経営者層などの、いわゆる“リーダー”に対して実施されます。

 

そして、前述のスポーツの例と同様に、ビジネス場面においてもコーチはあくまで部外者であり、一緒に仕事をしてくれるわけではありませんし、残業を手伝ってくれたりもしません。
また、「社長が部長」に対してや「部長が課長」に対して何か仕事上の指導をしたとしても、それはコーチングではありません。
同一社内に所属している者同士の間で行われる指導は、スポーツと同様、“チームプレイ”の一環であり、広い意味で社長・部長・課長は全員“プレイヤー”です。
コーチは社外の人間が客観的な立場から指導・アドバイスをするのが前提となります。
 

 

このように、コーチとはリーダーとしての側面もあります。
リーダーについては、社会心理学において研究がされていますが、実はその歴史は非常に古いものなのです。
紀元前の古代ギリシアやエジプト、中国などですでにリーダーに関連した記述が認められています。
現在の心理学においてリーダーとは「集団の目標達成および集団の維持・強化のために成員によってとられる影響力を行使する人」ということになります。
ビジネス場面においても、目標を達成するためにコーチ的に振る舞う必要性もあり、また対人関係を円滑にするための「良い先輩」という活動も必要になります。良いコーチとは、良いリーダーでもあるわけです。
 

 

コーチやリーダーに関しては、こころ検定1級のテキストである精神予防政策学の第1章で概観していますので、興味・関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。 


著者・編集者プロフィール
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

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