コラム

犯罪心理学 part2

2022.11.3
  • 被害者学
  • 犯罪心理学

犯罪心理学については以前にコラムの中で基礎的な内容を取り上げています。今回は、より詳細な内容について、解説をしていきたいと思います。 

 

 

犯罪心理学は加害者の心理を研究すると同時に、被害者についても研究する分野があります。

特にこの分野は被害者学ともよばれています。
犯罪は加害者と被害者
そして目撃者や傍観者などによって成立していると考えられます

当初、犯罪心理学では加害者の心理などに関する研究が中心でした。
しかし、第二次大戦後に心理学者のへンティヒによって被害者の要因が犯罪に及ぼす影響についても科学的に研究されるようになりました

これが、被害者学の学術的なスタートであると考えられています。

 

その後、心理学者のメンデルソーンによってvictimology(vittima+logos)の合成語がつくられ、これが、いわゆる「被害者学」という用語になりました。
そして、被害者を取り巻く現象を総合的に研究する必要性や被害者のサポート体制、治療・支援を実施する専門的な医療機関などについても考えられるようになりました。

心的外傷後ストレス障害(PTSD)

近年では、詐欺の被害者とならないようにするための被害者研究や、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対する治療・支援を通じて、犯罪の被害者およびその家族の救済にも重点が置かれるようになってきています。 

 

心的外傷後ストレス障害(PTSD)は自然災害などで被災することによって発症する可能性があるものですが、犯罪に巻き込まれることによっても発症する可能性があります。
心的外傷後ストレス障害(PTSDは、何らかのストレス要因が発生したことに起因する精神障害です。
その「きっかけ」となる要因には以下のようなものがあります。
 

 

・戦争:死と隣り合わせの恐怖、長時間に及ぶ極度の緊張、拷問、略奪、戦争犯罪など 

・犯罪:性的暴行、強盗、傷害、殺人、殺人未遂など。 

・災害:自然災害:台風・・竜巻・落雷・地震など 

・人為災害:火災・公害など 

・予期できぬ災:交通事故、身体機能および内臓器官の重度な病など 

 

上記のように犯罪被害についても正式な診断基準として含まれています。
また、心的外傷後ストレス障害(
PTSDでは、以下の3つの状況において、発症する可能性があるとされています。 

 ① 直接経験する 

② 他者に起きた出来事を目撃する 

③ 親族・友人などの身に起きた出来事について聞く 

 

 心的外傷後ストレス障害(PTSDは直接クライエント(患者)本人が経験するだけでなく、目撃することや限定された条件において「話を聞いた」という場合にも、発症する可能性があるのです。 

 

そして心的外傷後ストレス障害(PTSDには以下のような症状が認められ、このうちいくつかが認められる場合に診断されることになります。 

 

・ 苦痛を伴う記憶を突然、繰り返し思い出す 

・ 苦痛を伴う夢を繰り返し見る 

・ フラッシュバック(現実認識の喪失) 

・ 強烈な心理的苦痛 

・ 強烈な生理的反応 

・ 心的外傷的出来事に関連する苦痛を伴う記憶・思考・感情そのものを回避するか、回 避しようと試みる 

・ 心的外傷的出来事に関連する苦痛を伴う記憶・思考・感情を生起させる人・場所・会話・行動・物・状況などを回避するか、回避しようと試みる 

・ 記憶の異常(思い出せない等) 

・ 自他に対する強い否定的な思い込みや予想 

・ 自身への過剰な罪責感や他者に対する過剰な非難 

・ ネガティブな感情の持続 

・ 重要な活動への興味・関心・参加頻度の著しい低下 

・ 孤立感・疎遠感 

・ ポジティブな感情が生起しない 

・ 他者への言語的・行動的な攻撃(苛立ち・怒り) 

・ 無謀または自己破壊的な行動 

・ 過剰な警戒心 

・ 過剰な驚愕反応 

・ 注意の持続困難 

・ 睡眠障害 

 

これらの症状は非常に耐え難い苦痛を伴うため日常生活に大きな支障が生じ、対人恐怖や失職アルコール依存自殺などのさらなる障害や不都合をきたすケースが多くあります

 

心的外傷後ストレス障害(PTSDのクライエントの約半数は3カ月以内に回復しますが、予後不良なものも多いとされています。
それらに対しては
通常薬物療法だけでは十分な効果は得られないことも多く、特異的な症状に焦点を当てた行動療法や認知行動療法などが効果的な場合があります。 

 

犯罪被害との関連が深い心的外傷後ストレス障害(PTSD)ですが、こころ検定2級のテキストである精神医科学基礎の中で概観していますので、興味・関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。 

著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部 「つぶやきコラム」は、医療・福祉・心理学・メンタルケアの通信教育スクール「TERADA医療福祉カレッジ」が運営するメディアです。 医療・福祉・心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、調べたいことがある、学んでみたい人のために、学びを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。

関連記事