心理学では人間に影響を与える様々な「変数」の1つとして文化というものを捉えていますが、より広義の意味における文化とは、以下のような定義があります。
文化を「特定の社会の人々によって習得され、共有され、伝達される行動様式や生活様式」のシステム。知識・信仰・芸術・道徳・法律・慣習などの複合総体。
人間が環境に適応するに必要な「技術、経済、生産に結びついた社会組織の諸要素が文化の中心」とみる捉え方。
文化を「共有される観念の体系、概念や規則や意味の体系」や「知覚・信仰・評価・通達・行為に関する一連の規準」という立場。
象徴は「物体・行為・出来事・性質・関係について、意味内容をあらわす媒介手段」であり、このような「象徴的形態に表現され、歴史的に伝えられる意味のパターン」や「文化を『人間精神』の生みだした象徴体系」とした捉え方。
上記がいわゆる人類学などにおける文化の捉え方ですが、心理学的では、人間と環境との関係の中で文化を捉えようとすることが多いです。
たとえば、学習心理学・行動分析学の専門家であるスキナーは「行動を引き起こし、維持する社会的強化の随伴性」が文化であると定義しています。
このような、文化人類学(人類学)と心理学の融合が文化心理学です。
文化心理学では、人間個人の認知・*感情・動機づけなどの心理過程が、その個人が生活する文化で受け入れられている慣習や意味構造によって形成され、逆にそうした心理過程が文化慣習・意味構造を維持・変容させるという両者の相互影響過程を研究対象としています。
そして、文化心理学は、異なる文化における人間行動を比較検討する中から、文化と心理過程の相互関係を実証的に理解することを目的としています。
特にこの分野は異文化心理学とよばれています。
異文化心理学は、交差文化心理学・通文化心理学・比較文化心理学などともよばれるもので、人間の認知や行動、感情の普遍性と文化的特殊性を明らかにし、さらに文化間の相互作用を心理学的観点から探る領域のことを指します。
文化心理学者のベリーらによると、文化と行動の因果関係を明らかにし、心理学的知識の普遍化の可能性に焦点を当て、文化的経験を見極め、文化変化と個人の行動との関係について問題提起する研究領域とされています。
文化心理学者のトリアンディスとブリスリンは、心理学における異文化間研究がもたらす成果として、以下の4点を挙げています。
理論は世界の様々な地区で検証されて初めて堅固なものになる
アメリカで赤ちゃんの乳離れの年齢は1歳前であるが、他の文化圏では4、5歳前のところもある。
ある民族のアルコールの過度の飲用が、その民族の生物学的要因によるものなのか、あるいはある文化への社会化の影響なのかを区別するには他の文化への同化が異なる同一民族のいくつかの群を調査することで検討できる。
社会心理学の根本的な理論的問題は「行動は、人間と環境の関数である」ということであるが、その研究のためには研究者は常に全体的に経験している自文化から自分自身を引き離す必要がある。
他の文化の似たような行動を比較研究することによって、行動に及ぼしている社会的文脈の諸相を見出すことができる。
文化心理学・異文化心理学では、概念・理論・方法論・研究対象者・研究結果の解釈の基準などの文化的等価性を多角的な観点から検討し、実験者効果や反応傾向など同一文化圏では問題にならない基本的な研究の方法の要素の文化差を調整し、研究そのものが引き起こす文化特有の倫理的問題などの影響に細心の注意を払い、実験や調査を実施することが強く要求されます。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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