心理学・カウンセリング・メンタルケアの専門家には、12月生まれの著名な先生方がいます。
内田勇三郎は1894年12月15日生まれの日本の心理学者です。
内田は1921年に東京帝国大学(現在の東京大学)の心理学科を卒業し、その年に財団法人 協調会産業能率研究所で働きはじめます。
「産業能率」という言葉が示す通り、この法人は産業・組織心理学に関連する研究所であり、人間のパーソナリティ(性格)の傾向と職業や職種との関係についての内田の研究が重要な役割を担っています。
それが、後の内田-クレペリン精神作業検査の開発につながっていきます。
内田は大阪大学で博士号を取得しています。博士論文のタイトルは「臨床心理学的一方法としての内田クレペリン精神検査」というものです。
この「内田クレペリン精神検査」とは、内田-クレペリン精神作業検査のことであり、海外で開発・使用されていたクレペリン精神作業検査の日本語版であり、内田が開発したことで検査名にも「内田」の名が冠されています。
この検査は、対象者に一列に並んだ1桁の数値を連続加算する作業を繰り返させ、それによって得られる作業速度の変化を示す曲線(作業曲線)を測定・評価するというものです。
作業曲線にパーソナリティ(性格)が反映すると提唱したのはクレペリンの発想に基づくものです。
この基本的な検査の背景理論に対して、検査の具体的な手続の開発は内田によるものとなっています。
より具体的な検査評価としては、作業効率の安定性・誤答率・開始時や終了直前にみられる作業率の変化、休憩の影響などがこの検査の評価ポイントとなります。
また、この検査によって明らかとなったパーソナリティ(性格)は職業・職種への向き・不向きにも反映することが分かっています。
従って、内田-クレペリン精神作業検査は職業適性の確認や、企業の採用試験にも利用されています。
内田-クレペリン精神作業検査は、ドイツの精神医学者クレペリンによって開発されたものであり、基本的にはパーソナリティ検査(性格検査)として利用されます。
ただし、暗算作業による検査であるため、暗算による認知負荷・ストレス負荷の部分を利用して、ストレス課題としても活用されています。
ストレスに関する研究において、人間にストレスを与える必要があるわけですが、倫理的な問題があるため、心身に重大な影響を及ぼすようなストレス負荷は、科学的な実験・調査といえども、実施することはできません。
ですが、内田-クレペリン精神作業検査の場合は、単純な足し算の繰り返しなので、少なくとも身体への負荷は非常に小さくて済み、また、ネガティブな感情が生起することもないと考えられるため、ストレス研究において利用されることが多いものとなっています。
内田は作業検査の開発が有名ですが、博士論文のタイトルにもあるように、臨床心理学が専門でもあります。
そのため、東京府立松沢病院で嘱託職員や東京高等獣医学校の教授など、臨床分野でも仕事をしています。
その後も、内田は文部省や法政大学、早稲田大学などで教鞭を取っており、日本の草創期の心理学における教育分野でも活躍しています。
また、内田は日本・精神技術研究所を1947年に創設しています。
日本・精神技術研究所は最初は内田-クレペリン精神作業検査の販売・流通をメインとしていましたが、現在は名称を変えて、広く多くの心理検査・知能検査・発達検査の販売を実施しています。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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