耳の日と心理学には、どのような関係があるのでしょうか
【目次】
日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。3月3日は「耳の日」として、1956年に一般社団法人・日本耳鼻咽喉科学会が制定しています。日付は「3(み)月3(み)日」の語呂合わせから選ばれています。さらには、目・耳・声に障害があったヘレン・ケラーにアン・サリヴァンが様々な教育を始めた日が3月3日であり、電話の発明者であるアレクサンダー・グラハム・ベルの誕生日も3月3日でもあるなど、何かと3月3日は耳に関係する事柄が多いということもあります。この日は、耳の衛生についての知識の普及、聴覚障害の予防・治療などの理解を深めることが目的として、様々な活動が実施されて
います。
では、耳と心理学には、どのような関係があるのでしょうか。
耳・聴覚については、心理学の中でも主に生理心理学や知覚心理学において研究が実施されています。まず、聴覚に関する心理学的基礎として、時間説と場所説という2つの仮説があります。時間説は、耳にある蝸牛という部分の基底膜全体が振動し、その振動が脳に伝達された時点で音の高さが感じ取れるというものです。たとえば、300ヘルツの音は基底膜を毎秒300回振動させるため、それが聴覚神経の神経線維を毎秒300回反応させることになり、それが脳の中で音として知覚されるというメカニズムです。これに対して、場所説とは、基底膜の段階で既に音の高さが識別することができるというものです。基底膜は音の高さによって反応する部分(場所)が異なります。そのため、基底膜のどの部分(場所)が反応するかで、音の高さの違いが分かるというメカニズムがあるとされています。そして、最新の研究の結果、これらの時間説と場所説は対立する仮説ではないということが判明しており、時間説は低周波の音を知覚するメカニズムであり、場所説は高周波の音を知覚するメカニズムであると考えられています。
知覚心理学において各感覚の絶対閾(最小刺激)と弁別閾(丁度可知差異)というものがあることが判明しています。人間は目・耳・鼻・舌・皮膚によって、物事を知覚しています。しかし、あまりにも刺激が弱ければ、光や音、匂い等が存在していても感知することはできません。知覚心理学の実験の結果、聴覚の絶対閾(感知できる最小刺激)は「静かな状況で約6m離れたところにある時計の針の進む音が聞こえる」程度のものであるとされています。また「さっきよりも静かだ」のように感覚刺激が変化したことを感知できるかどうか、この変化を感知できる限界値である弁別閾(丁度可知差異)については、聴覚の場合、音の大きさが5%変化すれば、私たちは音が変化したと認識することができるとされています。
音や音楽は睡眠とも関係しています。自分が好きな音楽を聴くことで、感情が生起することが判明しています。たとえば、昼寝のような短時間睡眠の直後に自分が好きで、なおかつ興奮性のある音楽を聴くことで、睡眠慣性が減少することが判明しています。ただし、ここで重要なのは興奮性よりも、その楽曲を自分が好きかどうかであるとされています。実験として、短時間睡眠後に興奮性はあるが本人が好きではないと感じている楽曲を聴かせたところ、睡眠慣性そのものは減少したものの、その後の作業効率は向上しないという結果も報告されています。
耳に関する精神疾患として、心身症の一種であるメニエール病があります。メニエール病は耳の内耳にあるリンパ液の異常により、平衡感覚や聴覚に障害が発生する疾患です。主な症状として、眩暈・吐き気・耳鳴り・難聴などがあります。様々な原因が想定されてますが、心理社会的なストレスもメニエール病の原因の代表的なものであるとされています。
このように、耳や音についても、心理学では様々な角度から研究が実施されているのです。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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