エッセイの日と心理学には、どのような関係があるのでしょうか
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日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。2月28日は「エッセイの日」に制定されています。これは、木村治美エッセイストグループ(KEG)が制定したものです。この日は、エッセイストの元祖とされるフランスの哲学者であるミシェル・ド・モンテーニュの誕生日であることが制定のきっかけとなっています。モンテーニュは1580年に現実の人間を洞察し人間の生き方を探求して綴り続けた主著「随想録(エセー:Essais)」を刊行しており、これが世界で最初のエッセイであるとされています。「随想録」は体系的な哲学書ではなく、自分自身の経験や古典の引用をもとにした考察を語っており、フランスだけでなく、世界各国に影響を与えています。
エッセイとは日本語では随筆ともよばれ、文学における一形式で、筆者の体験や読書などから得た知識をもとに、それに対する感想・思索・思想をまとめた散文であると定義されています。なお、エッセイの語源は「試み」という意味であり、「試論(試みの論文)」という意味を経て文学ジャンルとして確立されました。
日本のエッセイー(随筆)の起源は平安時代中期の10世紀末に清少納言によって書かれた「枕草子」であるとされています。枕草子における日常的風景に対する鋭い観察眼は「をかし」という言葉で象徴されています。その後も、鴨長明の「方丈記」や吉田兼好の「徒然草」などの優れた随筆作品が登場しており。これら三つの随筆は「日本三大随筆」とよばれています。
では、エッセイと心理学には、どのような関係があるのでしょうか。
心理学では読むことと書くことが、それぞれ研究されており、その研究成果の一部は心理カウンセリングでも応用されています。私たちが文章を読むうえで重要となるのがワーキング・メモリーとよばれる能力です。ワーキング・メモリーは短期記憶の概念を発展させたもので、会話・読書・計算・推理など種々の認知機能の遂行中に情報がいかに操作され変換されるかといった情報の処理機能を重視するものとなっています。ワーキング・メモリーは言語的情報の処理のための音声ループと、視覚的・空間的情報の処理のための視空間スケッチパッドおよび、これら2つの下位システムを制御する中央制御部から構成されます。このうち、視空間スケッチパッドは内なる目に相当するものであり、目で見た文章などの情報を記憶し、処理していく能力となります。従って、読書には、この視空間スケッチパッドが関係していると考えられます。単語や文章を読むという能力に問題がある場合、それが疾患であることもあります。視覚や聴覚の障害、運動機能の障害などが認められず、全般的な知的発達にも遅れがないにもかかわらず、文字を読む際に文字や行の読み飛ばし、形の類似している他の文字への読み誤りが生じ、その結果、学習活動や日常生活において著しい困難を生じている障害を読書困難とよびます。聞く・話す・書く・読む・計算するといった特定の能力の1つあるいは複数に障害がみられる場合は限局性学習症と診断されることがあります。
精神科医・心療内科医などが患者に日記をつけるよう指示することもあり、筆記療法というカウンセリング手法もあります。実は「声に出す」ことよりも、「文章にする」ことの方が高次の認知処理を必要とするため、いわゆる「頭の中の整理整頓」が、より論理的に実施できるとされています。また、その過程でストレス低減が発生することも判明しています。筆記療法はストレスを感じた出来事について1日20 ~ 30分程度、3~4日間連続で文章化するというもので、出来事に対する認知的再構成と感情の浄化(カタルシス効果)の2つの側面があります。筆記療法を実施することで、ストレスの低減、医療機関の利用頻度の減少などの心身両面に対するポジティブな効果が認められています。
パソコンが開発・普及する以前は、鉛筆等の筆記用具による文章化が筆記療法の手法でしたが、現在では、パソコンのキーボード入力やスマートフォンによるフリッカー入力による文章化も同様に実施されています。
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