心理学・カウンセリング・メンタルケアの専門家には、8月生まれの著名な先生方がいます。
レンシス・リッカートは1903年8月5日生まれのアメリカの社会心理学者です。
リッカートは、自身の最大の功績ともよべるリッカート尺度を開発するという研究成果から、そのキャリアをスタートさせています。リッカートはこの尺度を研究開発したことで、1932年にアメリカのコロンビア大学で博士号を取得しています。
リッカートが開発したリッカート尺度とは、今では心理学における伝統的な尺度の1つとなっています。
リッカート尺度は人間の態度を測定するためのものとして開発されており、そういった意味では社会心理学や心理統計学、心理検査法に関する重要な研究成果となっています。
リッカート尺度は評定加算法ともよばれており、他の有名な心理尺度であるサーストンの等現間隔法やガットマンの尺度分析法などと同様に、個人の持つ「当てはまる – 当てはまらない」「賛成 – 反対」「そう思う – そう思わない」などのように一次元の評価連続体における態度対象の相対的位置を推定することを目的としたものとなっています。
より具体的には、態度として対象に対する個人の「賛成 – 反対」などの評価の程度を測定するため、態度対象についての評価的意味を内包する複数の短文を調査対象者に呈示し、各質問項目について、5件法や6件法などの評定尺度によって、どれに当てはまるのかを解答させるというものです。
たとえば、以下のような質問項目がリッカート尺度になります。
Q.落ち込んだ気持ちだ
1. 全く当てはまらない
2. 当てはまらない
3.どちらでもない
4. 当てはまる
5. 非常によく当てはまる
リッカートの評定加算法では、測定された各質問項目の得点の総和値(あるいは平均値)が、その対象に対する態度を示したものであるとしています。
これは、呈示された複数の質問項目への回答が評価的に一次元性をもっているならば、総和値(あるいは平均値)をとることによって、対象への評価以外の誤差が打ち消されあって、個人の評価連続体上における当該対象への評価の相対的な位置(すなわち態度)をより正しく推定することができるという考え方に基づいています。
そのため、心理統計学における主成分分析などによって、態度測定に用いられた質問項目に評価的な一次元性が保たれていないことが明らかである場合には、評定加算法によって態度の良い推定を行うことはできないという問題もあります。
また、質問項目によって回答の分散や偏り(歪度)が非常に大きい場合には、質問項目ごとに回答を標準化(z変換)した上で総和値(あるいは平均値)を求めるという手法をとる場合もあります。
リッカートの評定加算法は、サーストンの等現間隔法に較べて簡便であるだけではなく、態度を数量として分析処理することが容易であるため、心理学における態度測定や、様々な心理検査において、現在でも幅広く活用されています。
リッカートは尺度開発に関する研究で博士号を取得した後、ニューヨーク大学に勤務しています。
そして、1946年にミシガン大学の教授となり、同大学に社会調査センターを創設しています。
この社会調査センターは、1948年に心理学者のクルト・レヴィンが設立したマサチューセッツ工科大学の集団力学研究センターと合併することで、社会調査研究所となっています。
リッカートは1970年にミシガン大学を退官するまで所長を務めており同調査研究所の所長を務めており、ミシガン学派とよばれる学者・研究者グループの中心的な立場で研究活動を行っていました。
リッカートはミシガン大学の教授職を退官後、レンシス・リッカート研究所を創設し、精力的な研究活動をつづけました。
リッカートはその研究業績から、アメリカ統計協会会長やアメリカ心理学会理事、国際応用心理学会委員などを歴任しています。
リッカートが作成・開発した心理尺度については、こころ検定3級の5章でも概観していますので、興味・関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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