心理学・カウンセリング・メンタルケアの専門家には、7月生まれの著名な先生方がいます。
フレデリック・パールズはゲシュタルト療法を創始したことで有名です。
フレデリック・パールズはドイツ生まれの精神科医・精神分析家です。
パールズはベルリン大学・医学部を卒業後、オーストリアで精神分析の訓練を受けています。
そして、1932年に精神分析家の資格を取得しています。
その後、戦争の影響などもあり、1935年には南アフリカ・ヨハネスブルグに移住し、そこで妻のローラと共に精神分析研究所を設立しています。
しかし、精神分析家としての活動の中で、精神分析の手法に疑問を抱いたパールズは、精神分析から決別してしまいます。
戦後、1946年にアメリカに移住したパールズは、精神分析の研究所に勤務した後、独立して活動を続けています。
そして、1952年にニューヨーク・ゲシュタルト療法研究所を妻のローラと共に設立します。
これ以降、パールズは「ゲシュタルト療法」という名称を正式に用いていきます。
さらに、1954年には、クリーブランド・ゲシュタルト療法研究所も解説しています。
パールズが創始したゲシュタルト療法ですが、では、そもそも「ゲシュタルト」とは何なのでしょうか。
ゲシュタルトとはドイツ語で形、形状、全体性などの意味を持つ言葉です。
元々は知覚心理学や認知心理学に関する用語であり、人間の心理・精神というものは、様々な要素の寄せ集めではあるものの、個々の要素を集めたらそれが単純に全体を表しているのかというと、必ずしもそうではないということを指します。
つまり、「部分を集めれば、それが全体となる」という考え方は人間の心理・精神には必ずしも当てはまらないのではないかということです。
これは、ドイツの心理学者であるケーラーやコフカ、ウェルトハイマーらが提唱したものであり、彼らがドイツ人であったこともあり、ドイツ語の「ゲシュタルト」という言葉が用いられました。
ケーラーらはゲシュタルト心理学という分野を新たに確立し、「人間の心は必ずしも部分の総体ではない」ということを様々な実験によって明らかにしていきました。
ゲシュタルト療法は、このゲシュタルト心理学の要素を心理療法に活かしているものです。
ゲシュタルト療法は、まだ精神分析が主流であった1940年代にフレデリック・パールズによって創始されました。
パールズは、過去の経験や生育歴の探求よりも、「今、ここで」のクライエントの機能や関係性、全体性(ゲシュタルト)に焦点を当てることを目的とした新たな心理療法として、ゲシュタルト療法を確立させました。
ゲシュタルト療法は、人間の精神的な成長は環境から必要とされ、要請されていることへ同化することによって成されるとしています。
また、精神疾患や神経症状態は、環境との関係が妨害されていることによって引き起こされるとしています。
ゲシュタルト療法では、エンプティ・チェアやホット・シートなどの技法を用い、クライエントの自己責任の感覚を促進させ、自身の感情を自然に受け入れ、様々な気づきを促すという特徴があります。
そして、ゲシュタルト療法は、クライエントのパーソナリティを成長させることも重要な目的として設定しています。
ゲシュタルト療法を実施する際は、個人療法としてだけではなく、集団療法として実施することもあり、心理カウンセラーは療法実施時にクライエントの非言語的コミュニケーションにも注意を向け、それについてクライエントに指摘して、その意味を尋ねるという方法を取ります。
パールズは、クライエント個人の欲求と体験との関係をゲシュタルト心理学の考え方に沿って捉え、排除されていた自己の部分を心理療法によって統合することで、個人のゲシュタルトが完成されるとしています。
個人内のゲシュタルトが完成されることで、不適応が解消され、精神疾患の治療・改善が進むというのが、ゲシュタルト療法の考え方なのです。
ゲシュタルト療法については、こころ検定1級(メンタルケア心理専門士)のテキストであるカウンセリング技法の中で概観していますので、興味・関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。
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この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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