心理学・カウンセリング・メンタルケアの専門家には、6月生まれの著名な先生方がいます。
ドナルド・マイケンバウムは1940年6月10日生まれのアメリカの心理学者です。
マイケンバウムの心理学分野における功績として、自己教示訓練とストレス免疫訓練を確立したことが挙げられます。
自己教示訓練とは言葉を活用したトレーニングによって心身をコントロールするというものです。
元々、言葉には行動を調節する機能があります。
この言葉による行動調節機能を積極的に心理カウンセリング・心理療法における治療・支援に活用し、クライエントが自分自身に適切な教示を与えることによって適応的な行動を獲得していくことを目的としたのが自己教示訓練です。
自己教示訓練はたくさんの実験の結果に基づいて確立されたものであり、その中心的な研究者がマイケンバウムであり、マイケンバウムによって自己教示訓練は体系化されました。
自己教示訓練には以下のような内容で構成されています。
①行動モデリング:適切な自己教示を行うモデルを通してクライエントが獲得すべき適
応した行動を示していく。
②行動リハーサル:モデルの誘導、もしくは誘導のない状況で適切な自己教示を行いなが
ら課題解決を実施する。
③段階的な練習:スモール・ステップで課題解決を実施する。
④社会的強化:適切な行動に対して与えられるもの。
つまり、自己教示訓練とは、適切な他者をモデルとして、その行動を真似しながら、自分自身への教示を練習していき、少しずつ問題を改善・解決しながら、その「改善・解決した」という評価を強化子(報酬)として習慣化していくという流れになります。
これを具体的に心理カウンセリング・心理療法として進めていくと、以下のような流れになります。
①医師や心理カウンセラーがモデルとなって、大きな声で話しながら課題を実施する。
②モデル(医師・心理カウンセラー)の誘導がある状況で、クライエントは治療者(医師
や心理カウンセラー)と同様の教示を自分自身に与えながら課題を実施する。
③モデル(医師・心理カウンセラー)の誘導がない状況で、クライエントは教示を自分自
身に与えながら課題を実施する。
④クライエントは教示をささやきながら課題を実施する。
⑤クライエントは心の中でつぶやくように、音声化することなく自分自身に教示を与え
ながら課題を実施する。
このように、自己教示訓練は心理療法の中でも行動療法的な要素の強いアプローチとなっています。
行動療法の基礎となっている学習心理学(行動分析学)における言語行動や言語強化という概念が自己教示訓練の中で応用されています。
この自己教示訓練を1つのベースとして、マイケンバウムが確立させたのがストレス免疫訓練です。
これはストレスに対する適切な対処行動(コーピング)を習得しつつ、ストレスに関連する様々な問題を予防するための行動を学習・獲得し、健康的な生活習慣を身につけるためのプログラムの総称です。
ストレス免疫訓練は自律訓練法・筋弛緩法・呼吸法などを用いたリラクゼーション・トレーニング(弛緩訓練)による心身のバランスの調節、ストレスの脅威性や対処可能性の評価の修正などの認知的なアプローチ、個人に応じた対処行動の積極的獲得、新しい問題解決法や社会的スキルの習得、刺激統制(スティミュラス・コントロール)と環境調整といった非常に多様な内容で構成されています。
つまり、あらゆる方法でストレスへの免疫力を高めようとする訓練や指導法なのです。
マイケンバウムはストレス・モデルの教授 = 学習からスタートし(教育の段階)、リラクゼーション法や社会的スキルの獲得といった行動的対処、否定的な自己陳述の修正といった認知的対処の方策を心理療法の中で獲得(リハーサルの段階)し、それらを実際の日常生活の中で実践していくためのサポート(適用訓練の段階)を進めていくというものになっています。
今回、本コラムで取り上げた自己教示訓練やストレス免疫訓練などの行動療法的なアプローチに興味・関心のある方は、こころ検定1級のカウンセリング技法のテキストで概観していますので、是非、勉強してみていただければと思います。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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