コラム

対面と非対面の心理カウンセリング

2017.8.24
  • ゲシュタルト療法
  • メンタルケア心理専門士(R)
  • 心理カウンセラー
  • こころ検定(R)
  • 心理

 

現在、日本には多数の心理カウンセラー資格が存在し、養成講座や養成スクールもたくさんあります。
各講座・各資格によって、習得している知識や技術は様々であり、一口に心理カウンセラーといっても能力には差があります。

 

近々、心理職の国家資格である公認心理師資格が誕生する予定となっていますが、公認心理師は独占資格ではないので、既存の様々な心理カウンセラー資格がなくなるわけではなく、今後も様々な資格取得者が心理カウンセリングの現場で活動を続けると考えられます。

このような現状の中で「心理カウンセリングの在り方」ということについて、改めて考える必要性が高まっています。

 

伝統的に心理カウンセリングは対面によるコミュニケーションによって実施されます。
これまでに心理カウンセリングに関して、膨大な量の先行研究が実施されていますが、基本的には対面式のカウンセリングをベースとしたものです。

従って、対面式の心理カウンセリングが最も正式かつ基本的な手法であるということは間違いないでしょう。
そのため、あらゆる心理カウンセラー資格のカリキュラムが対面式をベースとした知識・技能の習得に重点を置いています。

【対面式の心理カウンセリング】

では、実際に資格取得後、対面式の心理カウンセリングに従事する資格取得者はどれほどいるのでしょうか。
対面式ということは、どこかにカウンセリングルームのような空間を確保しなければなりません。
また、この空間は、あくまでカウンセリング用の空間であり、他の用途でも利用されるという状態は避けなければなりません。

 

カウンセリングを自宅や喫茶店、ファミリーレストラン、ホテルのラウンジ、カラオケボックスなどで実施するケースがありますが、これはカウンセリングのみを目的とした空間ではないため、あまり適切であるとはいえません。

こういったカウンセリング空間に関する問題は、医療機関や既存のカウンセリングルームに就職(雇用)されていれば、心理カウンセラー個人が気にしなければならない問題ではありません。

 

しかし、資格を取得したものの、雇用・採用される機会がなく、自営業としてカウンセリング業務を実施する場合、カウンセリング空間を確保するということが非常に重要な問題となるのです。

その結果、カウンセリングには不適切な空間で対面式のカウンセリングを実施するということになってしまいがちです。
心理カウンセリングにおける“場”の雰囲気がクライエントに与える影響は大きく、治療・支援の進み具合を左右することもあります。

 

また、喫茶店などには他の客もいるため、クライエントの個人情報保護という観点からも問題があると考えられます。
心理カウンセラーとしての雇用・採用されることが難しく、自営業として心理カウンセリング業務を開始する中で、無理矢理に“対面でのカウンセリング”を実施してしまうことは、逆に問題となってしまうこともあるのです。

 

【メールによる心理カウンセリング】

 

そこで、メールなどによるオンラインカウンセリングが注目を集めています。
オンライン上でのカウンセリングは特定の空間に縛られることがなく、いわゆる“カウンセリングルーム”というものが必要ありません。

従って、半ば強引に喫茶店などで対面式のカウンセリングをするよりは、整ったWeb環境上での非対面式のカウンセリングの方が望ましい場合もあります。

 

しかし、前述のように心理カウンセリングに関する研究知見は、対面式をベースとしているため、非対面式のカウンセリングに関する先行研究はまだ少なく、どれほどの治療・支援効果があるのかという点については、まだまだ研究成果を積み上げていく必要があります。
また、心理カウンセリングの教育カリキュラムとして、メール等のオンラインカウンセリングに関するものは非常に少なく、学ぶ機会が少ないという問題もあります。

 

しかし、雇用・採用されず、カウンセリングルームの自営ができないからといって、安易に“メールでカウンセリングをする”と考えるのは大きな問題となります。

非対面による心理カウンセリングには、非言語的コミュニケーションによる情報の欠落という問題やテキストベースのコミュニケーションやCMC(コンピュータを介したコミュニケーション)における人間の心理的な特徴などに関する知識を身につけておく必要があります。
単純に「対面式ができないから、非対面でやればいい」というほど、非対面式のカウンセリングは簡単なのものではなく、しっかりとオンラインカウンセリングの基礎を学んでおく必要があるのです。
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この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部

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