胃腸の日と心理学には、どのような関係があるのでしょうか
【目次】
日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。12月11日は「胃腸の日」に制定されています。これは、日本大衆薬工業協会(現:日本OTC医薬品協会)が2002年に制定したもので、日付は「いに(12)いい(11)(胃にいい)」の語呂合わせがきっかけとなっています。年末の師走に、この一年間を振り返り、大切な胃腸に負担をかけてきたことを思い、胃腸へのいたわりの気持ちを持ってもらいたいということを目的としています。
胃は粘膜から分泌される胃液(胃酸)には塩酸やタンパク質分解酵素などが含まれており、タンパク質が分解されます。その後、食物は胃から十二指腸へと送られます。この段階で、胃酸の影響で酸性となった食物を中和するために、アルカリ性の消化液が分泌される。十二指腸からは胆汁と膵液が分泌され、タンパク質・脂質・糖質の三大栄養素の全てが分解・消化されます。十二指腸の次は空腸と回腸に食物が送られます。これら十二指腸・空腸・回腸の3つを合わせて小腸とよびます。空腸と回腸では、これまでに消化・分解されてきた食物の栄養素が吸収されます。小腸の粘膜は非常に多くのヒダで覆われており、絨毛というビロード状の突起が隙間なく存在しています。さらに絨毛の表面には微絨毛とよばれる非常に小さいヒダが存在しています。このような構造により小腸内は表面積が広く、絨毛・微絨毛
の分も含めると30㎡にもなります。
このように表面積を拡大させることで、より効率的に栄養を吸収することができるのです。小腸での消化・吸収の後は、大腸へと進んでいきますい。大腸は盲腸・結腸・直腸の3つで構成されています。盲腸の先には虫垂とよばれる細い管状の突起があり、そこで行き止まりで、他の消化管ヘはつながっていない袋小路となっています。結腸では主に水分の吸収が行われ、この段階で便が形成されます。これらが健康な状態における胃腸の主な働きとなります。
では、心理学と胃腸には、どのような関係があるのでしょうか。
精神医学の対応領域となる精神疾患に心身症というものがあります。心身症とは「身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められる病態のこと。ただし、うつ病などの精神障害に伴う身体症状は除外する」と定義されています。心身症の代表的なものとして、胃や腸に関する疾患があります。より具体的には、胃潰瘍や十二指腸潰瘍です。これらは、ストレスの影響で発症することが多いとされています。胃潰瘍・十二指腸潰瘍の患者の約9割がヘリコバクターピロリ菌への感染が認められており、感染するとストレスに対する粘膜の抵抗力が低下することが判明しています。粘膜は胃や十二指腸を守る防御能力を持っていますが、その防御力が低下することで消化液の攻撃因子との間のバランスが崩れてしまい、粘膜に潰瘍(表面だけでなく深部まで傷ついた状態)ができてしまいます。具体的な症状としては、胸部から腹部にかけての痛みや不快感、胸やけなどです。痛みの症状に関しては、胃潰瘍の場合は食後に多く、十二指腸潰瘍の場合は夜間や空腹時に多いとされています。
もう1つ、心身症の代表的なものとして、過敏性腸症候群があります。過敏性腸症候群はストレスが直接の原因となるものは10%程度であるとされています。そして、ストレスが直接の原因の場合は症状の持続や悪化がストレスの程度と強く関連することが判明しています。過敏性腸症候群には、心理・社会的な要因が疾患の経過・治療の障害・健康上の危険因子となるかどうかが、心身症としての過敏性腸症候群の診断基準となっています。加えて、腹痛や腹部不快感などの共通する症状の他に、便秘型・下痢型・混合型・分類不能型という便通異常の種類によって4つの下位分類があります。また、一般的に男性は下痢型が多く、女性は便秘型が多いとされています。
このように、ストレスの影響が胃腸にあらわれることで心身症を発症することがあります。そして、これらの治療・支援にも、心理学・精神医学の知見が役立てられているのです。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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