心理学では性別について、どのような研究をしているのでしょうか。
男女の性別の違いは身体的な要素にも表れますが、精神的な面にも表れるものです。
心理学では、あらゆる実験や調査の際に統計学的な分析を実施します。
その際に注目すべき観点として、男女差があります。
研究の目的が特定の事柄に対して、男女差があるかどうかを検討するというものもありますが、基本的にどのような実験・調査において、男女差があるかどうかは、念のため、注意を向けるべき分析対象であると考えられています。
最近では、LGBTQなどの性別の多様性を認めていくということも広がりつつあります。
しかし、性別の多様性を認めながらも、心理学・精神医学という科学的な観点から、性別というものを研究していく必要性は高いままであると考えられます。
では、心理学的に性別について、どのような研究が行われているのでしょうか。
性別の違いにおける心理的な影響は、子どもの段階で発生するということが判明しています。
一般的に男の子は車や電車などのおもちゃに興味・関心を示し、それで遊ぶことが多いというイメージがあるのではないでしょうか。
また、女の子は人形やアクセサリーなどのおもちゃに興味・関心が強く、それで遊ぶことが多いというイメージもあるのではないでしょうか。
研究の結果、このような男女の差は、子どもが自身の性別をまだ明確に認識できていない2歳ころから発生しているということが判明しています。
では、子どもがまだ自覚がないにもかかわらず、興味・関心・行動に男女差が発生するのは、なぜなのでしょうか。
発達心理学などの研究の結果、主に2つの理由があるのではないかと考えられています。
1つ名は生物学的な要因です。1歳の男女の子どもに様々な映像を見せる実験の結果、既にこの段階で、男の子は車の映像に注目する時間が長く、女の子は人の顔に注目する時間が長いということが判明しています。
これは1歳の段階で男女には脳の構造やホルモン分泌などに大きな違いがあるからではないかとされています。
この実験結果から、男の子が車や電車が好きで、女の子が人形やアクセサリーが好きな理由が、なんとなく理解できるのではないでしょうか。
2つ目は周囲の大人たちの影響です。
両親や幼稚園の先生などの周囲の大人たちの中に「男のだから車や電車が好き」、「女の子だから人形やアクセサリーが好き」というある種の固定観念があるわけです。
その場合、子どもが望むと望まざるとにかかわらず、自然と男の子の周りには車や電車のおもちゃがあつまり、女の子の周りには人形やアクセサリーが集まってくるということになります。
子どもたちは、自然と自分たちの近くにあるおもちゃを遊んでいことで、結果的に「男の子と女の子は子どもの段階で遊び方に性差がある」と見えてしまうということになります。
精神医学の観点からは、性別違和という精神疾患のカテゴリーがあります。
これは、かつては性同一性障害とよばれていたものが病名の名称変更が実施されたものです。
生物学的な性別ではなく、社会的・文化的な性別のことをジェンダーといいますが、このジェンダーに対して著しく違和感を覚え、異なるジェンダーになりたいという願望や、異なるジェンダーとして社会的に扱われたいという欲求、異なるジェンダーとしての感情や行動を持っているという強い確信などが特徴を有するのが性別違和であるとされています。
また、性別違和は子どもと青年・成人で基準が分けられており、前述した内容は主に青年・成人のものです。
子どもの性別違和は、自分は指定されたものとは異なるジェンダーであるという主張にはじまり、服装・遊び・役割などにおいて好悪を明確に示すという特徴があります。
誤解をしてはならないのは、性別違和はイコールLGBTQの方々を指すという意味ではないということです。
LGBTQの方々の中には、自身のジェンダーに対して違和感を感じていなかったり、既に生物学的・社会的に違和感を乗り越えて適応をしている方々も多く存在します。
性別と心理学の関係性については、基本的な内容を少しではありますが、こころ検定3級の第1章で概観していますので、興味・関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
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