天才と心理学には、どのような関係があるのでしょうか
【目次】
日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。10月31日は「天才の日」に制定されています。これは「10(てん)3(さ)1(い)」の語呂合わせから、株式会社天才工場が制定したものです。この日は、自分の才能に気づき、天才のひとりであることを再確認する日ということを目的としています。
では、天才と心理学には、どのような関係があるのでしょうか。
心理学において、天才とは、一般の人々やいわゆる「秀才」と比べて、極めて卓越した文化水準で稀にみる創造的業績を成し遂げ、人類にとって歴史的・社会的に甚大な積極的影響をもたらした人物、あるいはその人の精神的な能力やパーソナリティ(性格・人格)などの総称的な意味合いで定義されています。心理学者のランゲ・アイヒバウムは、天才は心理学的実体というよりも、社会の中での価値評価という「関係」として理解されるべき概念であると述べています。また、アイヒバウムは天才には、各個人間で共通項となるような要素はないとも述べていますが、高い固執性・努力・自信などは共通するのではないかとも指摘しています。
精神科医のエルンスト・クレッチマーも、天才の心理学的な研究に従事した1人です。クレッチマーは、天才のもたらす価値は「特殊な精神構造の中から、心理的必然性に基づいて生まれ出たものに限る」という前提条件を設定し、天才とは単に既存の知識や技術の学習や教育の延長に位置づけられるものではないと定義しています。また、心理学者のゴールトンは、家系研究から天才が遺伝的であることを実証しようとしました。しかし、家系の中に類似する他の優秀者を全くもたない天才も多く、もし、遺伝的基盤があるとすれば個人において独自の遺伝要因の組合せの効果(非相加的遺伝効果)と環境との交互作用によって、天才が作り上げられるのではないかと述べています。心理学者のターマンは、高い知能、具体的にはIQ(知能指数)で140以上の人のことを天才と定義しています。そして、ターマンはIQ140以上の児童の追跡調査を行っています。その結果、この「天才児たち」は、けっして病的ではなく、むしろ社会的適応性に富む望ましいパーソナリティを有する場合が多いということが判明しました。しかし、この「天才児」が大人になった際にも、同じく天才的なままであったかというと、けしてそうではなく、本当に独創的な天才は排出されなかったも言われています。
著名な心理学者の中にも、いわゆる天才的な人物がいます。ジャン・ピアジェは1896年8月9日生まれのスイスの心理学者です。ピアジェは10代のころにベルグソンの著作である『創造的進化』を読み、認識の生物学的なメカニズムの解明に一生を捧げる決心をしたとされています。あくまで哲学的であり、実験的基礎のないベルグソンの議論を超え、生物学と認識分析の間に哲学ではない何かが必要であると感じたピアジェは、その何かを心理学に見出そうとしました。ピアジェは子どものころから非常に優秀であり、何と10歳(小学校4年生くらい)で論文を学術雑誌に投稿し、その論文が雑誌に掲載されました。そして、19歳(高校三年生か大学1年生くらい)で大学の動物学科を卒業すると、チューリッヒついでパリで心理学を学び、1921年(25歳くらい)に理学博士号を取得。同時に、ジュネーヴを本拠地として知能の構造を明らかにするための児童心理学研究を続けました。
また、観念の発達に関する研究にも従事しました。1950年には『発生的認識論序説』全3巻を執筆し、科学としての認識論を構築しました。さらに、この分野には学際的研究が必要であると感じたピアジェは、1955年には発生的認識論国際センターをジュネーヴ大学に創設し、物理理学者や論理学者など諸科学の専門家と心理学者の共同研究による理論的検討と実験的分析を同時に進めました。これらの認識論に関する研究と児童心理に関する研究の結果、ピアジェは4段階の認知発達に関する理論を提唱しています。幼少期のエピソードから、その後の研究業績から見ても、ピアジェはいわゆる「天才」の1人であったといえるのではないでしょうか。
一般的にも天才はIQの高さで判断されことが多いものです。IQの測定は各種知能検査によって実施されます。こころ検定4級の第7章では、知能について概観していますので、興味・関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。
この記事を執筆・編集したのはTERADA医療福祉カレッジ編集部
「つぶやきコラム」は、医療・福祉・心理学・メンタルケアの通信教育スクール「TERADA医療福祉カレッジ」が運営するメディアです。
医療・福祉・心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、調べたいことがある、学んでみたい人のために、学びを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。